ウォルマートは9月22日、「即日薬局配送」に冷蔵および再調合処方薬を追加し、全米での提供を開始した。対象となるのはインスリンやGLP-1製剤、小児用アモキシシリンなどであり、食料品や日用品と同一のオンライン注文で届ける仕組みは業界初となる。

 ウォルマート薬局部門シニアバイスプレジデントのケビン・ホスト氏は「お客様の声に耳を傾け、シームレスな体験を提供することを追求してきた。冷蔵処方薬配送の追加は、地域社会を中心に据えた事業姿勢の成果である」と語った。

即日配送を拡大、安全性と品質も確保

 ウォルマートが薬局配送を試験導入したのは1年前。全米展開からはまだ8カ月だが、すでに累計400万件以上の注文を処理した。最速配送記録はわずか9分であり、同社の物流基盤とデジタル連携の強さを示している。

 今回のサービス拡大により、冷蔵・再調合薬を含む処方薬の90%以上を顧客宅へ直接届けられるようになった。冷蔵薬は薬局売り上げの3割以上を占めており、数百万人にとって重要な利便性をもたらす。特に移動が難しい人々や在宅購買を好む消費者層にとって価値が高いとされる。

 配送は利便性だけでなく、医療分野ならではの厳格な品質管理も求められる。ウォルマートは以下の仕組みで安全性を担保している。

・リアルタイム追跡:アプリ上で配送状況を常時確認可能。

・断熱包装:薬は規定温度を維持する断熱バッグで配送。

・光遮断:紫外線や外光から薬を守る特殊素材を使用。

・対面受け取り:顧客は電子署名で受け取りを完了。

薬局の役割拡大、会員制度とも連動

 ウォルマートは1万5000人以上の薬剤師を擁し、処方薬の提供に加え、相談や予防接種、健康診断を全国規模で展開している。2006年からは「ジェネリック薬4ドルプログラム」を導入し、低価格での薬提供を実現してきた。

 今回の配送拡大により、このプログラムの対象薬も自宅まで届けられるようになった。「子どもが病気のとき、抗生物質と一緒にトマトスープや湯たんぽを玄関先で受け取れる」と同社は説明する。

 配送サービスは有料だが、サブスクリプション会員「Walmart+」に加入していれば無料で利用できる(提供地域に限る)。非会員は配送方法に応じた料金を支払う必要がある。デジタル基盤と全国的な店舗網を組み合わせることで、既存の食品配送ネットワークを持つウォルマートはオムニチャネル小売りを再定義し、食品・日用品・医薬品を一体的に提供するモデルを確立しつつある。