メキシコ・中米のウォルマートが、今後5年間でエルサルバドルに総額2億6000万ドルを投資すると発表した。8月28日、サンタ・テクラで新店舗「ウォルマート・サンタ・テクラ(スーパーセンター)」の起工式を実施し、同国での成長加速に向けた大型計画を始動させた格好だ。投資は新規出店や既存店の改装、テクノロジー強化、物流網の増強、サステナビリティ施策の拡充などに充てる計画だ。

 今回の投資により直接・間接合計で1000人超の雇用が生まれる見込み。雇用の多くは新規出店地域のコミュニティ内で創出されるとしており、中小規模の現地サプライヤー、とりわけ農業生産者や小規模製造業との取引関係(プロダクティブ・リンケージ)を一段と強化する方針。エルサルバドル国内で販売される商品の90%はすでに現地企業からの供給で賄っており、同国から他市場への輸出品目も拡大している。

出店や物流への投資を継続

 ウォルマート中米の最高経営責任者(CEO)であるクリスティナ・ロンスキ氏は、「当社はエルサルバドルの潜在力を信じており、投資を通じて経済活性化と雇用創出、そしてサプライヤーとの商取引拡大を後押しする」と強調した。今後も新規出店、改装、テクノロジー、物流、サステナビリティへの投資を継続するとしている。

 起工したウォルマート・サンタ・テクラは、同国におけるスーパーセンターフォーマットとして7店舗目、全体では103店舗目となる。100人超の直接雇用を見込むほか、200台超の駐車場、オンライン注文のピックアップゾーン、セルフチェックアウトを備える。

 環境面では、太陽光パネル、電気自動車充電ステーション、温室効果ガスを排出しないとするCO₂冷媒技術、水銀不使用のLED照明、節水型衛生設備など最新のサステナビリティ施策を導入する。

 今回の大型投資は、同社のオムニチャネル戦略の強化とも直結する。実店舗とデジタル基盤を横断して「いつでも・どこでも・好きな方法で」買い物できる環境を整えることで、利便性の底上げを図る。生活インフラに関わるサービス提供にも踏み込み、送金の受け取り・送金、公共料金の支払い、商品の支払手段の柔軟化など、家計の“質”を高めるソリューションを拡充している。

5カ国で900店超を運営

 エルサルバドルにおける同社の現況は、店舗数102。総合スーパー「ウォルマート」をはじめ、「ラ・デスペンサ・デ・ドン・フアン」「マキシ・デスペンサ」「デスペンサ・ファミリア」の各バナーを運営。従業員数は4700人、物流センター3、プラント1、中小企業・農業サプライヤーは135社に上る。

 事業拡大と並行して「リジェネラティブ・カンパニー(再生型企業)」への転換も掲げる。具体的には、①従業員とサプライヤー、特に中小の地域企業への機会創出、②脆弱な人々を含むコミュニティ支援、③自然の回復・保全を目指すサステナビリティの主導、④最高水準の倫理・コンプライアンスの堅持、の四本柱を据えて運営する方針である。

 メキシコ・中米のウォルマートは、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの5か国で、ディスカウントストア、ボデガ、スーパーマーケット、スーパーセンターの4フォーマット合計で900店超を運営する。