米小売大手ウォルマートが、南アフリカでの初のブランド店舗を年内にオープンすることを発表した。生鮮食品から衣料品まで幅広い商品を取り揃え、「毎日低価格(Every Day Low Price)」戦略を南アフリカ市場に導入する方針だ。

現地調達と地域密着を重視

 9月9日、米ウォルマートは、南アフリカにおける同社初となる「ウォルマート」ブランドの実店舗を、年内に開業する計画を発表した。これにより、ウォルマートはアフリカ市場でのプレゼンスをさらに強化し、同地域におけるリテール競争に本格参入する構えを見せている。

 この動きは、単なる新店舗展開にとどまらない。同社は今年4月に開催した「グロース・サミット」において、アフリカ12カ国のサプライヤーと接点を持ち、現地の中小規模事業者との協業体制を築いてきた。

 今回の南アフリカ進出は、その延長線上に位置付けられる。ウォルマートは、生鮮食品や日用品、アパレル、テクノロジー製品に加えて、「地元調達商品」を豊富に取り揃えることで、地域社会と共に歩む姿勢を明確に打ち出している。

 ウォルマート・インターナショナル社長兼CEOのキャス・マクレイ氏は、「現地サプライヤーや起業家と連携することで、ウォルマートの“毎日低価格”を実現しながら、地域経済の活性化にも貢献したい」と述べる。

オムニチャネルにも注力

 すでに複数の店舗用地は開発段階に入っており、正式な開業日は10月に発表される見通し。今後数か月の間に、店舗の所在地や雇用情報、地域貢献活動などに関する追加情報も開示される予定だ。

 ウォルマートは今回の南アフリカ展開において、実店舗だけでなくデジタル機能の導入にも力を入れる方針である。買い物体験を向上させるため、オンラインとオフラインを融合した「オムニチャネル戦略」を採用し、スマートフォンやウェブを活用した利便性の高い購買環境の構築を目指している。

 ウォルマート傘下で南アフリカを拠点とするマスマートの社長兼CEO、マイルズ・ヴァン・レンスバーグ氏は、「現地の声に耳を傾け、長期的な信頼関係を築きながら、南アフリカのニーズに応える買い物体験を提供していきたい」と語った。

「1ランドの重み」を理解

 レンスバーグ氏は価格戦略についても言及し、「1ランドでも価格に対する期待は大きい」と強調した。品質と低価格の両立を図ることで顧客の信頼を勝ち取り、競争優位性を確保する考えだ。

 同氏はまた、「店舗の入口での温かい挨拶から、商品棚での案内、スムーズなレジ対応まで、すべての接点で“特別な体験”を提供することが、リテールの基本である」と語り、店舗運営における顧客接点の重要性を強調した。

 ウォルマートとウォルマート財団は、世界中の地域社会に対して、企業としての強みと慈善活動の両面から支援を行ってきた。南アフリカにおいても、食料安全保障や災害支援、地域起業家の支援といった分野での投資をすでに開始している。今後の店舗展開と並行して、現地の雇用創出、地域連携、サステナビリティ活動に対する取り組みも強化していく。