セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、3月25日、同社に買収を提案しているアリマンタシォン・クシュタール(ACT)との協議に関し、誤解があるとして、追加情報を発表した。内容は、3月13日のクシュタール社の会見で指摘された点に対する反論。

 まず、「米国独占禁止法上の課題を理由に、セブン&アイがACTの提案を拒否しているのではないか」との指摘については、「その事実はなく、むしろ、当社はACTと十分に連携しており、現在両社は、米国独禁法の規制当局からの承認を得る可能性を高めるため、また、将来想定され得る訴訟に備えるために、潜在的な店舗売却の可能性について互いに協力して検討を進めている」とした。

 ACTの「セブン&アイは、独禁法にばかりこだわっている」との指摘に対しては、「米国独禁法上のハードルが大きな障壁だと深刻に受け止めている」と改めて主張。米スーパーのアルバートソンズとクローガーの経営統合が米国独禁法で承認を得られなかったことを示し、ステークホルダーの利益を毀損しないためには、慎重な対応が必要との認識を示した。

 また、「ACTは過去に多くのM&Aを実施し、必要な規制当局からの承認取得等についての豊富な実績と経験を有するため、本件においても米国連邦取引委員会(FTC)からの承認に懸念はない」旨のACTの主張については、「今回の買収は、ACTが過去に行ったいかなるM&Aとも根本的に性質が異なる」と否定。「もし承認の懸念がないなら、FTCの承認取得に関するリスクを当社株主に負担させるのではなく、自らが負担する条件を示すべきだが、それはこれまでなされていない」と指摘した。

 さらに「ACTは、当社が指摘する米国独禁法上の明らかな課題に対して真摯に向き合い、対応することを直近まで一切行ってこなかった」と強調。セブン&アイは昨年10月、ACTに対して、具体的な店舗売却パッケージについてより踏み込んだ協議ができるよう2社間の秘密保持契約(NDA)の締結を求めたが、ACTがこれを拒否。今年2月に再提案を行うもACTは再度拒否し、代わりに昨年10月に締結した共同弁護契約(JDA)に基づく作業を提案、セブン&アイ側はこれを受け入れたと説明。「セブン&アイがNDAの締結を拒否しているというACTの主張は誤り」だと強調した。

 セブン&アイは、「ACTが、本件を友好的な形で進めるというのなら、友好的取引に向けた協議の際のNDAに通常含まれる保護条項(例:スタンドスティル条項)の受け入れは可能なはずで、もし、ACTがこれを受け入れるのなら、当社はいつでもNDAを締結する用意がある」と主張した。

 このほか、「セブン&アイは、ACTが外国企業だという理由で本件買収提案を拒否している」との指摘も誤解だとしたほか、「次期社長予定の、スティーブン・ヘイズ・デイカス取締役は適任ではなく、自らの利益のためにプロセスを濫用した」とのACTの主張についても、「デイカス氏は24年11月末になってはじめて指名委員会で名前が挙げられた。同氏が、自らを次期CEO候補者とするよう要請したことは一切ない」として、この主張も否定した。