イギリスのディスカウントスーパーマーケット大手のリドルGBが、イギリス全土の時給制従業員約2万8000人を対象に大幅な賃上げを実施することを発表した。これにより、全国の初任給時給は従来の12.40ポンドから12.75ポンドへと引き上げられ、勤続年数に応じて13.65ポンド(約2611円、1ポンド= 191.3円で換算)まで段階的に昇給することになる。
一方、ロンドン地区の新規採用者は時給14.00ポンドからスタートし、同様に14.35ポンド(2745円)まで上昇する見込みだ。新たな時給制度は2025年3月に施行され、政府が4月に予定しているナショナル・リビング・ウェイジ(国民生活賃金=生活に必要な最低賃金)やリビング・ウェイジ財団の「リアル・リビング・ウェイジ」を上回る水準となっている。
年間の総投資額5400万ポンド超
リドルGBの今回の賃上げに伴う投資額は約1500万ポンド(約28億7000万円)に上る。この金額には時給制だけでなく、同社の給与制従業員の賃上げ分も含まれており、1年間の総投資額は5400万ポンド(103億3000万円)を超える見通しである。
同社のチーフ・ピープル・オフィサー(CPO)を務めるステファニー・ロジャース氏は、リドルが「1年以上にわたり最も成長率の高い実店舗型スーパーマーケットである背景には、全国の従業員一人ひとりが高品質で手頃な商品を提供していることが大きい」と述べている。今回の賃金引き上げは、そうした従業員の努力を正当に評価すると同時に、企業として人材に投資し続ける姿勢を明確に示すものだという。
リドルGBは、イギリスでは「トップ・エンプロイヤーズ・インスティテュート」により4年連続で国内トップクラスの雇用主に選ばれており、グローバル規模でも「Xラージ・エンタープライズ(超大企業)」に初めて認定されたほか、「トップ・エンプロイヤー・ヨーロッパ」を8年連続で獲得している。
リドルGBは1994年にイギリスで事業を開始して以来、イングランド、スコットランド、ウェールズの各地に事業を拡大し、現在では3万5000人を超える従業員と970を超える店舗、14の配送センターを運営している。世界的にはシュヴァルツグループの一員であり、同グループは31カ国で1万2350店舗以上、225以上の物流拠点・倉庫を展開している。グループ全体の従業員数は約37万5000人にのぼり、2023年度には1672億ユーロ(26 兆6000億円)の売上高を計上している。
リドルGBは二酸化炭素排出量の削減をはじめとする持続可能性への取り組みにも積極的だ。さらに、商品のおよそ3分の2を英国のサプライヤーから調達することで、地元生産者との連携を重視している。