米国の大手食品スーパーであるクローガーとアルバートソンズが、総額250億ドル規模の合併計画が破談したことを巡り、法廷闘争に発展している。両社はそれぞれに相手方を非難し合い、違約金や損害賠償を求める訴訟を繰り広げている。  

 3月25日、クローガーはデラウェア衡平法院に、アルバートソンズに対する反訴を提出した。これにより昨年12月に解消された合併契約を巡る法的対立が本格化した。クローガーは、合併に向けた規制当局の承認を得るために真摯に取り組んでいたと主張する。その一方で、アルバートソンズが密かにC&Sホールセール・グロサーズと共謀し、独自の規制戦略を進めていたと糾弾している。  

アルバートソンズの「秘密工作」を非難

 クローガーによれば、アルバートソンズの不正行為が明らかになったのは、反トラスト裁判中の証言であった。アルバートソンズが次期CEOとして指名したスーザン・モリス氏が、政府側の反対尋問により秘密裏の活動を暴露された。

 モリス氏は、個人的なメールや携帯電話を利用してC&S社のCEOと連絡を取り、合併妨害を進めていた。さらに、C&S社は自らが同意した譲渡パッケージを批判し、規制当局に「C&S社は譲渡先として不適切である」との印象を与えた。ワシントン州裁判所はこれらの証拠を根拠に合併差し止めを決定した。  

 クローガーはこれを受け、アルバートソンズに対し、合併承認を得るために行った投資の損害賠償を求める方針である。また、合併契約に基づく6億ドルの違約金も、アルバートソンズの不正行為により支払いの義務はないと主張している。  

「 プランB」が用意されていた?

 クローガーの反訴文書には、アルバートソンズは合併計画が失敗した場合に備え訴訟を起こすための「プランB」を準備していたと指摘されている。アルバートソンズは、反トラスト裁判において宣誓証言した内容と矛盾する主張を長期間にわたって積み重ね、法廷闘争を前提とした証拠を意図的に作成していたという。  

 ロイターの報道によれば、アルバートソンズがクローガーに対し違約金6億ドルと損害賠償を請求したのは、昨年12月に合併契約が解消された直後である。FTC(連邦取引委員会)が反トラスト法違反を主張し、裁判所が合併差し止めを命じたことで、アルバートソンズはクローガー側に重大な契約違反があったと主張している。  

 クローガー側はこれに対し、「アルバートソンズは合併計画の推進を放棄し、法廷闘争を選択していた」との見解を示している。クローガーの主張では、裁判所が合併を差し止めた直後に、アルバートソンズは140ページに及ぶ訴状を準備し、速やかに提出したことがその証左であるとしている。  

 ロイターによれば、アルバートソンズはクローガーの主張を真っ向から否定している。同社は声明を通じて、「当社は合併成功への強い決意を持って取り組んできたが、クローガーが最終的に合併を断念した」と述べた。アルバートソンズは合併破談の責任をクローガーに転嫁しようとしているが、クローガー側はこれを「根拠のない主張」としている。