全国万引犯罪防止機構は12月10日、セルフレジ不正対策会議を行い、小売事業者・団体、保安警備業者、セルフレジメーカー・販売事業者、警察など33事業者・団体が参加した。
冒頭、竹花豊理事長(冒頭写真)は「毎月1回、小売事業者らの方々と万引きの被害状況や対策について意見交換を行っているが、セルフレジでの不正についてもしっかり検討すべきだという声があがった。今やセルフレジでの不正は多くの方々にとって切実で深刻な問題になっている。被害に遭った事業者だけでなく、各社が協働して対応し、警察も連携して対策を講じていく。知恵を出し合ってしっかりやらないといけない時期にきている」と情報共有の重要性を強調した。
とあるスーパーの事例では、今年9月にセルフレジで不正を行った50代男性を店舗従業員が常人逮捕した。そのときの被害額は730円だったが、男性はアプリ会員だったことから店舗側が調べると、過去に二つの店舗で58回も同様の行為を行っていたことが発覚したという。同スーパーの担当者は「未精算退店は高齢者に多い。予防には目配り、挨拶、声がけの励行が欠かせない。不正に手を染めてしまいそうな人があきらめるような環境づくりが重要」と呼びかけ、「小売業としては価格を下げてお客様に喜んでもらうのが第一で、それができなければ存続に関わってくる。人件費を減らして儲けようとしているとか、そんな考えでDXを進めているわけではない」と語気を強めた。
また、とあるドラッグストアでは2024年度(5月中旬から10月まで)の被害件数が613件、金額にすると約121万円にものぼり、前年同期比で件数、金額ともに約145%と大きく増加している。不正は売り上げのロスにつながるだけでなく、発覚時には店長などの責任者が警察対応などに数時間を費やすこととなり、忙しい店舗現場にさらに負荷がかかる。そのため、同社では今年6月から万引き犯に被害金額に加えて人件費も請求する方針を採り、被害金額1万6000円+人件費4万円を請求したケースもあるという。
全国万引犯罪防止機構もセルフレジで不正を行った者に対する損害賠償請求を推奨しており、処罰厳罰化の流れは今後も続きそうだ。人手不足に悩む小売業にとってセルフレジの導入は業務効率化に寄与するものの、一部の不心得者への対策も待ったなしの状況といえる。