ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(以下、ウォルグリーン)が、プライベートエクイティ企業シカモア・パートナーズと売却に向けた交渉を進めている。複数の海外メディアが関係者の話として報じているが、今のところ両社から公式なコメントは出されていない。
報道によれば、ウォルグリーンはここ数週間、顧問と共に戦略を模索してきた中で、他の買収候補にも接触したものの、現在はシカモアとの交渉に集中している。取引が成立すれば、ウォルグリーンは非公開企業となり、来年初頭にも正式に合意が発表される可能性がある。
報道を好感して株価は急上昇
ウォルグリーンの株価は12月10日に約18%急騰した。ただし、2024年に入り、ウォルグリーンの株価は60%以上下落しており、9年前には時価総額が1000億ドル以上だったものが現在では80億ドルを切っている。急騰はいったんの歯止めにすぎない。
ウォルグリーンは過去にも非公開化を試みたことがあり、2019年には、プライベートエクイティ企業KKRが700億ドル以上の買収提案を行った。交渉は決裂したが、今回の交渉はかなり低い評価額で行われている模様。
小売りに強いプライベートエクイティ
シカモア・パートナーズは、小売りおよび消費分野の投資に特化したプライベートエクイティ企業と自社を位置づけており、過去にステイプルズやタルボットといった企業を買収した実績を持つ。ウォルグリーンとの交渉が成功すれば、シカモアにとって過去最大の取引となる可能性が高い。情報筋によれば、シカモアはウォルグリーンの一部事業を売却するか、あるいはパートナー企業と共同運営を進める計画を視野に入れているという。
ウォルグリーンは現在、インフレによる消費低迷や薬局部門の低い処方箋報酬率など、複数の課題に直面している。さらに、英国で展開する小売・薬局チェーン「ブーツ」の売却も数年間進展しておらず、収益改善への道筋は険しい。
23年9月にはCEOが交代し、ヘルスケア業界のベテランであるティム・ウェントワースが新たに就任した。中間管理職の削減や、10億ドル規模のコスト削減計画を発表し、今後3年間で1200店舗を閉鎖する計画を進めている。
売却が実現すれば、さらなる事業売却やリストラで経営再建を加速する可能性がある。交渉の行方が注目される。