物流の2024年問題を背景に、サプライチェーンの製・配・販それぞれの物流改革が急ピッチで進行中だ。

 今年4月からトラックドライバーの残業時間に上限規制(年間960時間まで)が適用された。これにより、従来のままでは物が運べなくなる恐れが生じかねない、というのがいわゆる2024年問題だ。またドライバーの賃上げに向け、国は同3月から運賃水準を平均8%引き上げるよう求めており、物流現場の生産性改善やサプライチェーン間の連携強化が待ったなしとなっている。

 これを受け、昨年から今年にかけて目立つのが協業の動きだ。大手食品卸のトップは「今年に入って物流費の値上げが相次いでおり、とても自社単独で吸収できるような状況ではない。同業との共同配送をさらに進めていく」と危機感を募らせる。

 こうした思いはメーカー、小売りも同様だ。食品メーカーでは加工食品大手5社の共同出資による物流会社「F-LINE」が先行しているが、今年6月には冷凍食品大手の味の素冷凍食品、テーブルマークなど5社が、共同物流の拡大や物流現場の生産性改善などで協業すると発表した。

 小売業では首都圏の食品スーパーが中心となった「SM物流研究会」(冒頭写真)や、トライアルホールディングス、イオングループが中心となり、九州、北海道、中四国で物流研究会が続々発足し、企業の壁を越えた取り組みにつなげようという機運が高まっている。

 製・配・販の3者連携も進行中だ。計54社が参加する製・配・販連携協議会において、商品マスタや事業所マスタの標準化と整備、スマートボックスの導入検討、商取引の透明化などが議論されている。

 国も4月以降、引き続き物流改善に向けた動きを活発化させている。6月末には国土交通省のパレット標準化推進分科会が最終取りまとめとして、パレットの標準仕様を1100mm四方のT-11とすることを決めた。合わせて一貫パレチゼーションを目指す観点からレンタル方式も推進している。

 また一定規模以上の事業者に対し、物流の中長期計画や報告を求め、実施状況が不十分の場合は勧告や命令を行い、規制的措置も取るとする改正物流効率化法が今年4月に成立した。これを受け、規制的措置の施行に向けた検討会が6月に立ち上がった。 

 また国土交通省は悪質な荷主・元請事業者等への是正指導を行う「トラックGメン」を設置した。すでに王子マテリア、ヤマト運輸が「勧告・公表」を受けている。いずれも長時間の荷待ちなどが違反行為とされた。ただ、勧告・公表しても、罰金などの反則規定はないことから、中小企業では残業時間の上限規制を超えている例も多いという。

 今年9月10日から13日にかけて東京ビッグサイトで開催される「国際物流総合展」には、問題解決の鍵となる機器やサービスが集結する。会場に足を運べば、情報収集の場としても役立つ。現状の対策が十分かどうかを確認する契機としたい。