10年後には20~30代となり、経済活動の主役へと躍り出る「Z世代」。本連載では、Z世代にホットなモノ・コトを取り上げ、展開する企業の戦略や、なぜZ世代に刺さっているのかを調査。見えづらいZ世代のニーズや生態を掘り起こすとともに、若年層の“ニュートレンド”が、今後の“ニュースタンダード”になり得る可能性を探る。今回のテーマはずばりゲーム・eスポーツだ。新市場の取り込みに積極的な動きを見せるJ.フロントリテイリングとグループ企業にフォーカス。前・中・後編にわたって、取り組みをレポートする。(前編はこちら)

「若い子たちがゲームでご飯を食べていけるように」とXENOZを設立

 昨年12月、J.フロントリテイリングに参画したXENOZ(ゼノス)は、同グループ企業の中でも異色の存在と言える。同社のメイン事業は、「VALORANT(ヴァロラント)」や「Apex Legends(エイペックスレジェンズ)」などのゲームで活躍するeスポーツチーム「SCARZ(スカーズ)」の運営だ。彼らはどんな道のりを歩み、今般のJフロント入りを決断したのか。「Hype Up(ハイプアップ)」立ち上げの裏にある、もう一つの物語をひもといていく。

「ゲームをやるだけじゃ1円も稼げないので、当時は普通にサラリーマンをしていました」

 そう言って、ゼノス社長の友利洋一氏は笑う。時を巻き戻すこと約10年、当時ゼノスはまだ影も形もなく、今を時めくスカーズも一介のアマチュアチームに過ぎなかった。友利社長がスカーズを立ち上げたのは2012年のことだ。大のゲーム好きが高じ、対人で競い合うオンラインシューティングゲームにのめり込んだことをきっかけにチームを発足、プレーヤーとして鳴らした。

 だが、20代も半ばを過ぎた頃、自身のプレーに限界を感じ始める。競技シーンからの引退を考えた時、真っ先に頭に浮かんだのは、後に続く次世代のプレーヤーたちに何ができるかだった。「若くて才能ある子たちがゲームでご飯を食べていけるようにしたい」。友利社長は一念発起し、スカーズをプロチームにすべくスポンサー集めに奔走。15年にゲーム関連企業との契約に至り、これを機にゼノスも立ち上げた。だが、当時の世間のeスポーツの認知度は今以上に低かった。スポンサーは思うように集まらず、それからしばらくは一進一退の状況が続いた。「限られた運転資金の中で、チームは結果を残し続けなくてはならない。プロスポーツの厳しさを痛感する日々だった」と友利社長は振り返る。

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