3段階で省エネ対策を紹介

 高騰する電気代の抑制を、店舗の状況や課題に合わせて、省エネ機器の提案のみならず、正しい運用方法やメンテナンスサービス、遠隔制御など、多彩なソリューションで支援する。パナソニック産機システムズが今年度特に力を入れている取り組みだ。

 共働き世帯の増加などを受け、簡便ニーズが高まり、冷凍食品の需要が拡大していることから、冷凍食品の売り場を広げるスーパーマーケット(SM)が増えているが、これに水を差しているのが電気代の高騰だ。ロシアのウクライナ侵攻などで、昨年から燃料価格が高騰、電気代も急上昇した影響で、主要SMでは、昨年度の水道光熱費が一昨年度に比べ1.2倍から2倍近くまで増加、営業利益を圧迫する事態も生じている。電気代は当面高止まりすると見られることから、同社では、冷凍・冷蔵ショーケースの省エネ提案を強化。すぐに取り組めるものから専門家に委託するものまで、3段階に分けて提案している。コールドチェーン事業本部企画統括部企画1部の森合充部長は、「お客様のお困りごとを解決するという観点で提案を行っており、スーパーマーケット・トレードショー2023でも、多くの来場者に関心を持っていただけた」と手応えを語る。

機器の入れ替えで消費電力が大幅に低減

 その具体的な提案内容は、①今すぐできる対策、②機器導入による対策、③遠隔制御による対策の3段階に分けられる。

 一つ目の「今すぐできる対策」は、冷凍・冷蔵ショーケースの正しい運用による省エネだ。店舗によっては、冷気の吐き出し口に埃が溜まり目詰まりを起こしている、冷気の吸い込み口を商品がふさいでいるなどが原因で効果的に冷やせていないケースも多い。同社によれば、適切なメンテナンスと正しい運用で、消費電力を最大40%削減することもできるため、まずはここを見直す必要があるという。ただ、人手不足で対応ができないところも少なくない。そのような店舗には、保守メンテナンス契約による設備点検と省エネ提案も行っている。

上部に冷凍機を搭載した冷凍機内蔵形冷凍リーチインショーケース。消費電力を33%カットし、10年間の使用 で電気代を約439万円削減* * できる
*試算条件:オープンタイプの冷凍多段形ショーケースと冷凍リーチインショーケースの比較
**試算条件:電気料金30円/kWh、8尺換算、店舗営業時間15時間
インバーター制御で効率的に運転するインバーター冷凍機

 二つ目は、機器の導入による運用コストの削減だ。旧来の冷凍・冷蔵ショーケースは、オープンケースが一般的だが、これにガラス扉を取り付けることで、消費電力を3割以上削減できた事例もある。特に、冷凍リーチインショーケースは、エネルギー効率も高く、冷凍オープンケースから入れ替えることで、4割近い省エネになる場合もある。

冷凍平形ショーケースに上部扉を設置することでも省エネ効果が得られる

 さらに、引き合いが増えているのが、ショーケースや冷凍機を一元管理する店舗統合管理システム「エコストアシステム」だ。店舗コントローラーに、ショーケース、冷凍機などをつなぎ、冷凍機の運転圧力を調整するほか、ショーケースと空調機の協調運転も行うもので、店内の温度変化に応じてショーケースの温度も変えられ、1台の店舗コントローラーで最大300の端末を一元管理することも可能だ。エコストアシステムの活用で冷凍機の消費電力を年間約15%削減した事例もあり、「スーパーのお客様からは、店舗コントローラーを導入し、既存のシステムをつなげて使いたいというご要望も多数いただいている」(森合部長)という。

 さらに、こうした集中管理をもう一段高めた遠隔データサービス「エスクーボ」による省エネチューニングも提供している。これは、冷凍・冷蔵機器の運転・設定情報を遠隔で診断するもので、そこに現地調査も加えて、改善点を割り出し、最もエネルギー効率がよくなる状態に機器を設定した上で、最適な運転ができるようチューニングも行うというもの。専門家に任せることで、より効果的な省エネが期待できる。

 また、同社独自のサービスとして、冷やす価値提供サービス「エスクーボシーズ」をサブスク型で展開している。これは、パナソニック産機システムズが機器類を所有したまま顧客の店舗に導入。店舗は月額利用料を払って使用する仕組み。サービスには、機器の清掃や点検に加え、フルメンテナンス、温度や電力の監視サービスなども含まれるため、初期投資を抑えたいという企業には利用しやすい仕組みと言える。

 今年、スーパーショーケース事業が60年を迎え、ラッコのシンボルマークも一新したパナソニック。顧客ニーズに応えるべく、多様な商品やサービスを取り揃え、高騰する電気代の抑制にも寄与していく構えだ。

(冒頭写真 冷凍オープンケースに比べて消費電力が少ない冷凍リーチインショーケース)