イオンは4月25日、東京西部を地盤とする食品スーパー(SM)のいなげやを子会社化すると発表した。11月までにイオンがいなげやの株式を51%まで取得して子会社化し、2024年11月を目処に同じくイオングループのSM連合であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)が100%子会社化する。いなげやと経営統合することで、USMHは売上高9000億円超、660店舗規模となり、関東で最大のSM企業となる見通しだ。

 3社は2022年度の当初から経営統合に向けた協議を続けてきた。会見に出席したいなげやの本杉吉員社長(写真中央)は、SM業界の競争激化、水道光熱費や輸送費の上昇、原材料の値上げなどの状況を挙げ、「このような状況が今後さらに首都圏市場でも加速することが予見される中で、単独での企業努力で持続的な成長を目指すことが、本当に社会に貢献できるのか、自問自答を繰り返してきた」とした上で、「単独で変革と挑戦に取り組むのではなく、志を同じくするパートナーとともに成長していくことが最適であるとの判断に至った」と語った。

 今後はイオン、いなげや、USMHの3社で統合準備委員会を立ち上げ、提携内容について検討していく。検討事項は、PBトップバリュの導入拡大、NBや地域商品、輸入商品などの共同調達、店舗の活性化、物流センターやプロセスセンターの機能整理と活用などを掲げている。また、いなげやはUSMHの子会社となる前提として、子会社化以降も独立性の確保、屋号や経営理念の維持、従業員の雇用維持と雇用条件を不利益に変更しないことなどの条件を確認している。 

 会見に出席したイオンの吉田昭夫社長(写真左)は「SM業界を取り巻く環境が厳しくなる中、これまでの延長線上にないモデルへと進化させていく必要があると思っている。そのためにはDXやPB開発に代表される、次の成長に向けた投資を積極的に行えるだけの一定のスケールを有することが必要。スケールメリットを生かし、デジタルや決済機能など様々なグループのアセットを最大限に活用し、首都圏における強いSM連合体を作っていきたい」と抱負を述べた。

 またUSMHの藤田元宏社長(写真右)は、「首都圏にトータル約700カ所のタッチポイントを持つことは今後OMOを含めた戦略を考えていく上で大きな財産になる。また首都圏を一つのマーケットとして捉えると戦略を誤る。首都圏全体のシェアを上げていくためには、それぞれのエリアでそれぞれのブランドでお客様との信頼を構築できた企業が集まることが首都圏のシェアを上げていくことにつながる」と語り、USMH傘下のマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東に、いなげやを含めた4社でマーケットシェアを高めていきたいとの考えを示した。