日本スーパーマーケット協会(JSA)の川野幸夫会長(ヤオコー会長)は12月21日、業界3団体の定例会見にオンラインで出席し、2023年の展望を語った。年末商戦に期待を込める一方で、今後の景気動向は低調と予測。節約志向が高まる中、食品スーパー(SM)には価格対応を強めつつ、利益もしっかり確保するための工夫が必要と指摘した。また業界団体として取り組むテーマについては、製配販の協力によるサプライチェーンの効率化やキャッシュレス決済手数料の引き下げ、外国人人材の活用、就労制限につながる「年収の壁」問題などを挙げた。

節約志向の高まりから企業間格差が広がる

 コロナ禍の後、いわゆるリベンジ消費という話がありましたが、今お客様は節約志向の中で出費をできるだけ抑えながら、ある意味で我慢の生活をなさっていると思います。年末には、普段の日に我慢した分せめてハレの日は楽しみたい、という思いもあるんだろうと。そういう意味では年末商戦、年明けにかけての需要は期待ができるんではないかと思っています。

 ただ来年はなかなか難しい年になる。経済は残念ながら低迷をし続けるだろうと見ています。ロシアのウクライナ侵攻がすぐに終わりそうもありませんし、また欧米にしても景気がよくならないだろうと言われていますので、その中での日本の経済ということでは相変わらず低迷基調、お客様の個人消費も増えていかないんだろうと思います。

 コロナの追い風はやみつつあり、節約を求めるお客様の価格コンシャスは今後さらに強まる。来年は企業の実力がそのまま業績に表れる年になってしまうのではないか。企業間格差が広がりかねない競争環境の中、各社がそれぞれ頑張っていくしかないという厳しい状況が出てきています。

生産性向上と利益を稼ぐ商品開発が不可欠

 お客様の節約志向に応えつつ利益を残すためには一層の生産性向上が求められます。これに向け、JSAではSM業界の標準化や共有化を推進している。特に2024年問題に象徴される物流の危機が叫ばれる中、製配販の情報連携によるサプライチェーン全体の効率化のための調査・研究に取り組んでいます。

 またそれぞれの企業においても、ITの進展に伴う最新技術を活用したシステムや、店舗業務の機械化・デジタル化で生産性向上を図っています。その一環であるキャッシュレス決済については、持続的に決済比率を高めていけるよう、加盟店手数料の低減に向けた根本的な改革を国に要望していきます。

 また生産性改善によるコスト削減の一方、値頃で販売しても利益を稼げる商品の開発も不可欠と言えます。企業規模によって開発が難しいカテゴリーでは、ボランタリーチェーンや共同仕入れ機構などの活用も検討すべきでしょう。これらのことがしっかりできるかできないかによって企業の将来が大きく左右されかねないとも思っています。

大卒の外国人人材が日本を選ばなくなっている

 女性や高齢者を最大限活用したとしても人手不足はますます進むでしょう。外国人人材のさらなる活用に向けては、特定技能の受け入れ業種に小売業も含めてもらうよう、引き続き業界団体一丸となって活動を行っていきます。また就労制限につながる収入要件、いわゆる所得税の「103万円の壁」、社会保険の「106万円の壁」についても国に見直しを求めていきます。

 外国人労働者について言えば、今は特に円安なので、日本から自国に送金する際の額が目減りしている状況があります。しかしその前から外国人にとって日本で働くよりもよその国で働いた方がいいという状況が少しずつ出てきているんですね。例えばヤオコーでもかつて技能実習生のほとんどが大卒だった。ところが今は高卒が増えてきている。大卒の方はよその国へ行ってしまったということです。外国人人材が働きたいと考え、日本で共生できる環境を国として作っていくことは大きな課題だと認識しています。