国内リキュール№1の売り上げで圧倒的な支持を得る「コカレロ」を製造・販売するイントレピッド・スピリッツが日本法人を2021年に立ち上げた。22年には世界で人気の高まるアイリッシュウイスキー「イーガンズ」を日本市場に向けて本格参入を開始。日本の洋酒市場拡大に一段と力を入れる同社のラルフCEOと日本法人の畑社長に話を聞いた。

老舗「イーガンズ」を現代に復活 170周年限定商品とイベントを展開

 ――事業展開についてお聞きします。

 ラルフ 当社は2013年、「斬新でグローバルなポートフォリオの開拓と追求」をミッションに掲げ、世界規模で事業を前進させていくことを目的にアイルランドで会社を立ち上げました。その中でも当社の代表的な商品として世界と日本で最も売れているのが「コカレロ」になります。日本でもリピーターが非常に多く、若年層を中心にファンを獲得できた当社の代表商品の一つです。もともとコカレロは南米古来のハーブ酒で、そこに特別な17種類ものハーブをブレンドしたもので、これらハーブの複雑な風味を抽出するため、蒸気蒸留製法を取り入れ、繊細で爽やかな香りを引き立たせることに成功しました。また、世界最古の蒸留酒ポティーン「マッド・マーチ・ヘア」、さらに世界初オーストラリア産オーガニックベルモット「リーガル・ローグ」やブラジルが誇る地酒カシャーサ「フーバ」など世界でも競争力のあるスピリッツを数多く扱っています。

 ――大手にはできない、とてもユニークなポートフォリオを展開していますね。

  ラルフ はい。他に代表的な商品に「イーガンズ」があります。イーガンズはアイルランド中央部のタラモアという町で、1852年に創業した170年の歴史を誇るアイルランドを代表するプレミアムウイスキーです。創業家のイーガン家は、「ゆりかごから墓場まで」と言われるほど多彩なビジネスで成功を収めていました。アイルランドの指導者たちとも親密な関係にありましたが、アイルランド独立運動やアメリカの酒税法などの影響により、アイリッシュウイスキー業界全体が衰退。その流れの中で1968年に事業を一旦休止しました。

 ――復活まで苦労されたのですか。

  ラルフ この偉大な創業家との信頼関係を築き上げ、創業家6代目のジョナサン・イーガン氏とルパート・イーガン氏とが事業を再開。彼らとともに、この一大事業をそのまま復活させることで、長い歴史に裏打ちされた世界でも非常に評価の高いプレミアムウイスキーを現代に見事復活することができました。12月にはそのイーガン家が揃って来日し、「イーガンズ」創業170周年記念イベントを行いました。イベントではイーガンズのファンなどを招き、イーガン家の歴史や評論家を交えた試飲会を行い、大変盛況でした。併せて創業170周年を記念し、バーボン樽で18年熟成、その後バニュルス樽で2年後熟、合計20年長期熟成させた「イーガンズ ジェネシス」(税込22万円)の170本を日本限定で発売することを発表しました。世界の中でも創業家の秘伝コレクションの樽から厳選した「イーガンズ ジェネシス」と170周年イベントを日本だけで実施したことは、創業家の日本のウイスキー市場拡大への強い意志の現れでもあります。

 ――日本の酒類市場をどのように見ていますか。

 ラルフ 日本の酒類市場全体はコロナ禍以降伸び悩んでいますが、洋酒市場は伸びています。特に世界5大ウイスキーの中で年間輸入金額の伸び率は、アイリッシュウイスキーが最も高い傾向にあります。財務省の貿易統計を元に算出したところ、22年に入るとさらに勢いが増し、今年上期の輸入額は前年同期比199%と市場が急拡大している。これだけ日本でアイリッシュウイスキーの愛好家が増えているわけです。そして日本のウイスキー愛好家は高級ウイスキーの商品価値を理解できる方が非常に多く、ウイスキー市場拡大の余地は大きい。ただし、日本の小売店でメインに陳列されているアイリッシュウイスキーは、1本1000~2000円台中心で、日本のウイスキーファンの舌を満足させるような、高級ウイスキーがないことが課題となっています。そこでイーガンズは、1本5900〜9900円(税抜)のスーパープレミアム市場をメインに展開。シングルグレーンの「ヴィンテージグレーン」、シングルモルトの「フォーティテュード」、「エンデヴァー」をメインに据え、独自路線で圧倒的な差別化を図り、プレミアムアイリッシュウイスキー№1を目指していきます。

イントレピッド・スピリッツ ジョン・ラルフ CEO

国分グループとの関係を強化し販路をさらに広げる

 ――流通戦略はいかがでしょうか。

 ラルフ グローバルビジネス体制を構築するため、現地法人を各国で立ち上げています。現在、アイルランド・ダブリン、中国・上海、アメリカ・ロサンゼルス、日本・東京に事務所があります。世界に支店・支社を持つことで、各エリアのマーケットに合わせた販売戦略が推進できます。当社は世界に40以上の市場を持っていますが、その中でも日本は最も重要なマーケットの一つです。

  イーガンズについては国分グループ本社との関係を強化し、流通販路をさらに広げる計画です。コロナの影響もあって業務用酒類市場の完全復活はこれからで、まずは家庭用酒類市場に注力していく。国分グループは日本を代表する食品・酒類卸で独立系であることから、各業態やチェーンへの圧倒的な営業提案力を持っています。イーガンズは小売店が利益と売り上げを確実に確保できることから、国分グループ本社・エリアカンパニー社が自信を持って売り込みができます。

170周年記念イベントの様子。左から創業家のジョナサン・イーガン氏、ウイスキー評論家の土屋守氏、創業家のルパート・イーガン氏

 ラルフ 今回、日本を代表する食品・酒類卸である国分グループ本社とともに、日本のウイスキー市場を開拓できることを大変うれしく思います。来日に合わせてイーガン創業家と国分グループ本社首脳陣と話しましたが、非常に友好的で販売先を一緒に広げることをお約束することができました。男性のアクティブシニアから圧倒的な支持を得ているイーガンズの品質の高さを訴求し、小売店でのウイスキーファンをさらに獲得していきたいですね。

イントレピッド・スピリッツ・ジャパン 畑幸男 社長

  実際にイーガンズは発売から半年足らずで多くのリピーターを獲得し、幅広い流通への広がりを見せています。主要なスーパーやリカーチェーン、百貨店、ECなど500以上の販路に導入を決め、さらに足元では業務用卸、2次卸からの注文も増えています。また今後も他のウイスキーとは比べ物にならいないほどクオリティーの高い新商品を次々と投入していく予定です。国内外のウイスキー人気の高まりから日本の百貨店でも数万円、数十万円、さらにそれ以上のプレミアムウイスキーの人気が高まっております。実際に当社も百貨店から価格が高く、より価値のあるプレミアムウイスキーの要望を数多くいただいております。世界中でアイリッシュウイスキーブームが起きているのもその大きな理由の一つです。

 ――今後の日本市場への展開は。

 ラルフ 大手にはできないニッチな高級市場を日本でさらに育成するため、まずはイーガンズにフォーカスしていきます。そのため品質には絶対妥協せず、最高品質を日本の消費者の皆さまに理解していただくことが最も大事なことです。そのために莫大な投資を行い、さらなる成長を促します。当社の付加価値の高い洋酒の展開拡大によって、日本の流通の皆さまと一緒に、価格競争に陥らない利益と売り上げを最大化する高級洋酒市場を作っていきたいですね。

問い合わせ先
イントレピッド・スピリッツ・ジャパン株式会社
TEL:03-3943-0701
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