全社軒並み減少、唯一横ばいでとどまるマツキヨ

 ドラッグストアで選出したのは計15社。これまで各社が買収してきたドラッグチェーンも含む。スーパーと同様、2015年と2025年の人口総数、競合店数から1店舗当たり人口の増減率を算出し、企業別平均をまとめた。

 結果は500m商圏では15社全てで商圏人口が減少する見通し。スーパー以上に人口減の厳しい実態が示された。ただしその中でなんとか踏みとどまっているのがマツモトキヨシホールディングス(HD)で、1km商圏で見ると減少率は横ばい。化粧品を強みとし、駅前立地など比較的都心に強い特徴が表れている。

 全国チェーンではツルハHD、ウエルシアHD、サンドラッグ、ココカラファイン、富士薬品を取り上げたが、中でも直近の注目度が高いのが、前述のマツキヨと統合協議を進めているココカラファインだろう。こちらは1km商圏で1.3%減の予測。全体で見れば減少率は低い方だが、マツキヨと比べると開きがある。マツキヨ側は一緒になることで商圏人口のアドバンテージが薄まることになるため、今後特にココカラの郊外店に対してはある程度の整理か、何らかのテコ入れが必要だろうと推察される。

 一方、地域ごとにより際立った特性が表れたのがリージョナル企業だ。首都圏でドミナントを築くクリエイトSDHD、中部を地盤に都市型展開を強めるスギHDはともに減少率1.3%と比較的小幅にとどめた。特にクリエイトSDは1km商圏の1店舗当たり人口が約7000人と最も多く、首都圏の肥沃さを改めて知らしめた。

 逆に1km商圏の減少率が7.5%と図抜けて高く、1店舗当たり人口も最も少なかったのが岩手県に本社を構える薬王堂HDだ。同社はこうした環境下で店舗経営を成り立たせるべく、家電や調理器具、軽衣料までを品揃えする「小商圏バラエティ型コンビニエンス・ドラッグストア」を志向。7000人商圏で成立する店づくりを掲げているが、競合を加味した1km商圏の張り付きは2000人台であり、想像以上に逼迫した状況が見て取れる。そのほか、カワチ薬品、クスリのアオキHD、Genky DrugStoresといった地方出身企業は減少率も3~4%台と比較的高めとなった。

減少数が大きいのは、またも大阪

 ドラッグストアの選定店舗数は1万4012店。スーパーで選定した約6700店の倍の数となる。2025年に向けて人口が減少する店舗を抜き出すと、全体の73.8%を占めた。スーパーと似た数値を示すのは、前回2010年比の時と同様の傾向だ。そのうち2桁減となるのは14.6%で、これもスーパーと大きくは変わらなかった。

 最も減少率が高かった店舗も、これまた同様に北海道夕張市の店舗。ココカラファイン平和店が35.3%減の推計値を示した。ただしその後は軒並み道内の店舗というわけではなく、広島県安芸太田町のウエルシア山県安芸太田店(30.8%減)、ツルハを挟んで、石川県輪島市のシメノドラッグ門前店(28.5%減)などが続いた。

 では減少数ではどうか。上位10店はスーパーと同じく全て大阪府の店舗だった。トップのココカラファインカナート天下茶屋店は1km商圏に暮らす約6万人が10年で約1万2000人減少する(大阪市、20.2%減)。続くキリン堂岸里駅前店も約1万人減(大阪市、17.9%減)、コスモス薬品御堂店も約8000人減(門真市、15.7%減)の予測だ。

 逆に増加率では2割増となる店が212店、全体の1.5%あるとの結果だった。トップは江東区のマツモトキヨシダイバーシティ東京プラザ店で27.9%増。以降は軒並み港区の店舗だった。

 増加数でも上位10店の立地は港区、中央区で占められ、やはり足元商圏の数は東京がダントツだ。その中で7店を有するのがマツキヨグループ。好立地をきっちり占拠することが、推計商圏人口の減少率を極小に収められている理由でもあるのだろう。

 こうした最後のオアシスをめぐり、ドラッグストアの出店競争は今後さらに激しさを増すと見られる。特に都市部へ攻め込む姿勢が顕著なのがコスモス薬品だ。昨年4月、東京渋谷区に関東1号店となる広尾店をオープン。同店の1km商圏の人口増減率は9.7%増と高いポテンシャルを秘めている。続けて都内にオープンした中野サンモール店(中野区、2.7%減)、西葛西駅店(江戸川区、1.3%減)はデータを見る限り人口が増え続ける1等地ではないようだが、続けて新宿歌舞伎町、池袋駅前にも出店(直近オープンのため、今回のデータには未収録)、需要を取り込もうとする意欲は旺盛だ。

 一方、少子高齢化によって人口が減り続ける地方。だが、こちらも見方を変えれば悪いことばかりではない。地域を支える店としてニーズ対応を深めることで、小商圏の需要を丸ごと囲い込むという戦い方もあるからだ。いずれの戦略を取るにせよ、ピンチをチャンスに変える業態の模索こそ、ドラッグストアの生き残りのカギといえよう。

2025年にお客が減る店、増える店トップ3

(2025年推計商圏人口が2015年比で最も少なくなる店、多くなる店トップ3)

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