米小売大手ターゲットは、チャットGPT内でターゲットの商品を発見・購入できる業界初の「対話型・キュレーション型ショッピング体験」を開始すると発表した。AIを活用した購買体験を、単なる検索ではなく“会話しながら進むショッピング”へと進化させる取り組みであり、ホリデー商戦に向けた戦略的施策である。

 新サービスは、チャットGPT上に統合された「ターゲットアプリ」を通じて提供され、ユーザーは会話形式で商品提案を受け、生鮮食品を含む幅広いカテゴリーから複数の商品をまとめて購入できる。また、受け取り方法としてドライブアップ(駐車場で受け取り)、店頭ピックアップ、配送といった複数のオプションを選択することが可能で、ターゲットが提供してきた利便性をそのままAIチャネルへ拡張した形となる。 ターゲットのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高情報・プロダクト責任者であるプラット・ヴェマナ氏は、「ターゲットのすべては“ゲスト中心”から始まる。チャットGPTのように数百万人が集まる新しい空間に進出することは、当然の流れ」と述べる。

チャットGPTを新たな店舗に

「われわれは、ショッピング体験をこの新しいチャネルに持ち込む最初の小売企業の一つであることを誇りに思う。まるで友人との会話のように自然で役に立つ買い物を実現することがゴールだ」(ヴェマナ氏)。

 ユーザーがチャットGPT内でターゲットをタグ付けし、「休日の夜、家族で映画鑑賞するための準備をしたい」と相談すれば、アプリはブランケット、キャンドル、新作スナック、スリッパなど、ターゲットらしいスタイル性の高い商品を組み合わせて提案する。ユーザーは会話を続けながら「買い物かご」に商品を入れ、そのまま決済まで完了できる。

Z世代を中心に浸透する“AIコンシェルジュ”購買

 最新のハリス・ポール調査では、Z世代の約半数が「AIを購買判断の参考にすることに抵抗がない」という結果が出ており、AIが購買プロセスに深く入り込むトレンドを裏付けている。

 ターゲットはこの潮流をとらえ、チャットGPTを単なる質問ツールではなく“コンシェルジュ型ショッピング空間”として活用する。顧客は必要なものだけでなく、会話を通じたインスピレーションも得られる。

 今後数週間で、「ターゲット・サークル」アカウント連携や当日配送機能を追加し、より高度なAI購買体験へと進化させる計画だ。

企業内部でもAI活用を本格化

 今回のオープンAIとの提携は、ターゲットが進めるテクノロジー投資の一環であり、同社はすでに社内でチャットGPTエンタープライズを活用している。自社データと連携させることで、オペレーションの効率化、業務スピード向上、創造的業務の拡大を進めている。

さらにターゲットは、AIを以下の領域にも活用している。

・サプライチェーン予測の高度化
・店舗オペレーションの自動化
・デジタル体験のパーソナライズ
・ベンダーパートナー連携の効率化

 ヴェマナ氏は、「ターゲットは“AIを使う企業”から“AIで動く企業”へ進化している。AIは顧客との自然なインタラクションを生み出し、従業員にはより高度なツールを与え、トレンドへの対応力を加速させている」と説明する。

 今回の取り組みは、ECサイトやアプリに次ぐ“第三の購買チャネル”としてのAI会話空間の可能性を大きく広げるものだ。商品検索、提案、決済、受け取りまでの一連の体験がチャットGPT内で完結し、これまでになかった“対話主導型ショッピング”を実現している。ターゲットはホリデーシーズンに向け、こうしたAIを活用した買い物体験を提供していく。