フランスの大手小売企業であるカジノ・グループが、モロッコの複合企業H&Sインベスト・ホールディング(以下、H&S)と戦略的パートナーシップ契約を締結し、2035年までにモロッコ国内に210店舗を超える都市型コンビニエンスストアを展開する。カジノ・グループが保有する「フランプリ」と「モノプリ」の2ブランドが、モロッコ市場に初めて導入されることになる。
両社による今回の契約は、カジノ・グループが推進する国際戦略の一環であり、その中核をなすのはフランチャイズ方式によるブランド展開である。すでにカジノ・グループはフランス本土外において30カ国以上に進出しており、24年時点で472のフランチャイズ店舗を展開している。
これはグループ全体の売上高のうち3.5%を構成するに至っている。新たな展開先としてのモロッコは、ブランド力と物流ノウハウを生かしつつ、低投資で事業を拡大できる市場と位置づけられている。
フランチャイズ展開でリスク抑制
H&Sは05年創業のモロッコ資本による企業グループであり、製造、物流、不動産、メディアなど複数のセクターにまたがる事業を展開している。食品、衛生、健康、美容といった生活必需品分野に強みを持ち、同国の経済基盤の中で重要な役割を担っている。
今回の提携はH&Sが小売部門を強化するという中長期的戦略の一環であり、カジノ・グループの都市型ブランドを活用することで、モロッコにおけるコンビニエンス小売の多様化と革新を目指す。
展開される「フランプリ」は都市住民をターゲットにした利便性重視の小型店舗であり、厳選された商品構成と近隣密着型のサービスを特徴とする。一方「モノプリ」は食品からファッション、家庭用品、美容、レジャー商品までを一カ所で取り扱う「ワンストップ型」店舗であり、中間層から富裕層まで幅広い消費者を対象としている。どちらのブランドも単なる物販にとどまらず、デジタル化された顧客体験や即食・日常サービスを組み込んだ店舗設計が計画されている。
初期店舗のオープンは26年を予定しており、取り扱う商品は新鮮な生鮮食品を中心に構成される。特に、地元の生産者から調達されたローカル商品を高比率で導入することにより、「高品質」「利便性」「地域密着」を兼ね備えた新業態としての差別化を図る。
H&Sのモンセフ・ベルカヤト会長は「カジノ・グループという国際的な大手との提携は誇らしい成果であり、新たな顧客体験の創出を通じて30年までに1000人以上の直接・間接雇用を創出する」と述べている。