ドイツのディスカウント大手アルディ(サウス)が5月12日、ドイツ国内の大手食品小売業者として初めて、生鮮肉の冷蔵棚を「動物の種類別」ではなく「飼育方法別」に再編するという新コンセプトを導入したことを発表した。動物福祉に配慮した製品をより簡単に消費者が選択できる環境を整えることを目的としている。
「飼育転換」を背景とした取り組み
アルディ(サウス)は2021年に「飼育方法の転換)」と題した目標を掲げ、2030年までに生鮮肉、飲用牛乳、冷蔵の肉加工品(ソーセージやハムなど)をすべて飼育レベル3以上の製品に切り替える方針を明示してきた。すでに飲用牛乳、七面鳥肉、牛肉といった主要製品において、飼育レベル3、4、5のみに絞った販売へと切り替えている。
この「飼育レベル」は、ドイツにおける家畜飼育基準を1~4の段階で分類したもので、1が最低基準、4が最高水準の動物福祉を反映した飼育形態とされている。さらにアルディ(サウス)は、業界自主基準を超えるレベル5を独自に設定し、それを自社製品に反映している。
今回導入された冷蔵棚の新方式では、生鮮肉製品を以下の3つのカテゴリーで分類して陳列する:
青色エリア:従来型の飼育方法(レベル1・2)の製品
緑色エリア:飼育レベル3以上の製品およびすべてのひき肉
赤色エリア:週間特売などのキャンペーン対象商品
色分けされた冷蔵棚により、消費者は「よりよい飼育環境で育てられた肉製品」を視覚的に直感で判断できるようになった。これは従来の動物種別(牛、豚、鶏など)で分けていた方式とは一線を画すものだ。
顧客の購買行動の変化に対応
アルディ(サウス)の発表によれば、飼育レベル3以上の「動物福祉対応商品」への需要は継続的に増加しており、すでに同社の店頭では飼育レベル1のソーセージ製品は販売されていない。消費者の意識変化が実際の購買行動にも表れていることを示しており、企業側のサステナビリティ方針が市場にも受け入れられている証左といえる。
アルディ(サウス)でサステナビリティ部門を統括するユリア・アドゥ博士は、「私たちの目標は、お客様が高飼育レベルの商品を簡単に、そして直感的に見つけられるようにすること。同じ志を持つ他社の参画も歓迎する」と秋波を送る。
この新しい配置の考え方は生鮮肉にとどまらず飲用牛乳、ソーセージ、チーズといった通常の冷蔵棚にも波及しており、天井から吊り下げる案内表示やマグネット式の表示によって、飼育レベルの高い製品が目立つよう工夫されている。こうした冷蔵棚の全面的な改編は、2025年7月中旬までに全店舗で完了する予定だ。
また、この試みはボン大学の農業・食品経済学市場調査グループによって独立した研究対象として追跡調査されている。飼育レベルの高い製品は価格が高くなる傾向にあり、こうした施策が低所得層の選択肢を狭めるリスクも指摘されている。しかし、冷蔵棚の明確な区分により、価格と倫理のバランスを消費者自身が判断しやすくなる効果もあると考えられる。
今回の冷蔵棚再編は、ドイツ国内の食品小売業における「見せ方の革新」であり、今後、他のチェーンがこの動きに追随するかどうかが注目される。