ドイツのメトロが、ホームレスの社会復帰支援に向けたホスピタリティ研修プログラムの実験を開始した。デュッセルドルフの社会復帰支援団体「ハウジング・ファースト」と、ストリートマガジン「フィフティ・フィフティ」と協力して、元ホームレスの労働市場復帰を支援する試みだ。

ドイツのホームレスは日本の200倍

 現在、ドイツには推定5万人が路上で生活し、60万人以上が住居を持たない状況である。厚生労働省の確認した日本のホームレス人口は2820人(24年1月全国調査)。定義や調査方法が異なると思われるが、単純計算で約200倍の規模となる。

 ホームレス問題の解決策として、ハウジング・ファーストは住居の提供と長期的なサポートを通じて、彼らが自立した生活を取り戻せるよう支援している。しかし、彼らが労働市場で再び職を得て自らの生活を支えることのハードルは依然として高い。

 この課題を解決する一助となるのが、メトロの新たな取り組み「ハウジング・ファースト・ミーツ・ガストロ」である。この試験プロジェクトでは、現在、メトロAG内のテストキッチンと食堂を活用し、元ホームレスの8名が4週間のホスピタリティ研修に参加している。研修では、参加者がホスピタリティ業界で働くための基礎的なスキルを習得し、働く意欲や精神的な安定性を示せることが求められる。

食堂のキッチンやカウンターで実務経験

 参加者は基礎訓練を受けた後、食堂のキッチンやフードカウンターに配属され、実務経験を積む。さらに、このプログラムではハウジング・ファーストの職員が常に参加者をサポートし、彼らの社会復帰を実現するための支援を行っている。11月中旬からは、ホスピタリティ業界で2カ月間の試用期間が設けられ、労働市場での定着を目指す。

 同プロジェクトを率いるメトロのアンドリュー・ウェーバー氏は、「我々はホームレス問題の解消に貢献したい。我々の知識や設備をその支援に活用できることを嬉しく思う。我々には人材を求めるホスピタリティ業界との密接な関係という強みがある」と語った。

 フィフティ・フィフティのマネージングディレクターであるヒューバート・オステンドルフ氏は、「(企業と支援団体が協力して)経済的および社会的責任を果たすことで、ホームレスの人々が社会に戻るための支援が可能になる。メトロ同様に他の企業にもこのプロジェクトに参加し、幅広い雇用機会を提供してほしい」と語っている。