世界的な「小売りファンド」が立ち上がる。テスコやアホールド・デレーズなど、国際的な小売り大手5社が共同でベンチャー・ファンド(VF)「W23グローバル」を設立し、小売業全体のイノベーションを加速させる。

 W23グローバルを設立したのは、テスコ(英国、アイルランド、中央ヨーロッパ)、アホールド・デレーズ(米国、ヨーロッパ、インドネシア)、ウールワース・グループ(オーストラリア、ニュージーランド)、エンパイア・カンパニー・リミテッド/ソビーズ・インク(カナダ)、ショップライト(アフリカ)の世界的な食料品小売業5社。

 食料品小売業を変革し、このセクターの持続可能性の課題に取り組む革新的な新興企業やスケールアップ企業に対して、5年間で1億2500万ドルを投資することを目指す。

 W23グローバルは、ファンドのパートナー企業(出資者)が継続的に行っている直接的なイノベーションと投資戦略を補完するものとして位置づけている。ファンドの投資先企業は、W23グローバルのパートナー企業以外との契約も自由だ。

 W23グローバルを率いる最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者(CIO)はイングリッド・メース氏。日用消費財と食料品小売業における25年以上のイノベーション経験を持ち、現在はオーストラリアのウールワース・グループのイノベーション・ファンドであるW23オーストラリアを率いている。W23オーストラリアは小売イノベーション、サステナビリティ、デジタルヘルスに投資しており、ベンチャーキャピタル業界では有名なブランドだという。

各国の課題をイノベーションで救う

 メース氏は「イノベーションが小売業と経済全体のバリューチェーンを再構築している今、我々は投資家に対して、世界中の食料品と持続可能性における変革的イノベーションへの比類なきアクセスを提供することを目指す。投資委員会には世界有数の食料品企業のCEOが5人も名を連ねており、エコシステムへのアクセスも可能だ」と語る。

 具体的な投資先ベンチャーの事業イメージとしては、①店舗やオンラインにおいて、より速く、よりパーソナライズされ、つながりのある体験を促進することで、消費者に利益をもたらす、②より効率的な食料品バリューチェーンを構築し、全てのステークホルダーに利益をもたらす、③農家から家庭までの食料品の持続可能性に関する最大の課題(排出量と廃棄物の削減、包装の革新、製品のトレーサビリティと透明性、健康的な選択、生物多様性など)に取り組む、などを挙げている。

 南アフリカ最大の小売業者であるショップライト・グループCEOのピーター・エンゲルブレヒト氏は、「ジニ係数で測定されるように、世界で最も不平等な国のひとつである南アフリカ国で、我々は顧客が生活を維持するために、より手頃な価格の解決策を毎日見つけなければならない。他のパートナーがこれまで直面したことも、日常的に対処したことがないような特殊な取引環境に我々は置かれている。このことが、他の小売企業よりも早くイノベーションを起こす必要性の原動力であり、我々がこのベンチャー事業に参入した理由だ」と、国際的ファンドへの期待を見せた。