アマゾンが薬局サービス「アマゾン・ファーマシー」にて、ニューヨーク市とロサンゼルス大都市圏で調剤医薬品の当日配達を開始した。AI(人工知能)を活用したシステムで、配達には電動自転車、電気自動車、ドローンなど環境に優しい配送車両を使用している。
このサービスは、インフルエンザ、高血圧、糖尿病、その他一般的な疾患の治療薬を、注文から数時間以内に自宅の玄関まで配達するというもの。当日配送は、既に、オースティン、インディアナポリス、マイアミ、フェニックス、シアトルで実施中で、テキサス州カレッジステーションでは、注文から1時間以内のドローン配達も行っている。
アマゾン・ファーマシーは、急性の症状に対応する最も一般的な処方箋薬を取り揃えた新しい小型施設を利用し、顧客の生活により近い場所で薬を提供している。ブルックリンの新施設では、アマゾン・ドットコムで購入可能な1万2000種類以上の医薬品のうち、急患対応に重点を置いたサブセット(限定品)を取り扱っている。この施設の薬剤師とフルフィルメント・チームは、処方箋を数分で処理することができる。
地域ごとに配送方法をカスタマイズ
処方箋薬の配達手法は、各都市によって少しずつ異なる。例えば、交通渋滞のマンハッタンでは、環境に優しい電動自転車に乗った配達員が顧客の家の玄関先まで薬を届けることがある。テキサスA&M大学のあるカレッジステーションでは、ドローンを使って薬を1時間以内に顧客のもとへ飛ばすこともある。ロサンゼルスや周辺の地域では、リヴィアンの電気自動車やその他の商用車が主に活用される。
処方箋薬の配達は1940年代から存在しているが、いまだに米国の薬局での注文のわずか10%に過ぎない。最長2週間かかる配達時間を、アマゾン・ファーマシーは数時間に短縮。リアルタイムの配達状況を提供することで、顧客が自宅でインフルエンザなどの急性症状を管理できるようにしている。調査によれば、患者は自宅のドアまで薬が届くと薬を飲む可能性が高くなり、それが健康状態の改善につながることが示唆されている。
アマゾン・ファーマシーの最高医療責任者を務める呼吸器専門医のヴィン・グプタ医師は、「人々は診断されるとほとんどすぐに治療が必要になることが多いため、医薬品の待ち時間をなくすことはヘルスケアの最優先事項であるべきだ」と考えている。
「一般的な薬局では、患者は、長い列に並ばなければいけなかったり、窓口で予想外の値段を請求されたりと、問題が多い。その点、アマゾン・ファーマシーは、世界的な物流ネットワークと最先端技術の活用で、この状況を打破しようとしている」(グプタ医師)。
生成AIが処方薬管理を迅速化
手書きやオンラインで処方箋が届くと、アマゾンの生成AIモデルが事実確認を行うことで、薬剤師が明確で正確な情報を受け取れるようにしている。
アマゾン・ファーマシーのフルフィルメント担当ディレクターであるケルビン・ダウネス氏は、「AIは、これまで何時間もかかっていた準備作業を数分、あるいは数秒に短縮し、管理ミスを減らすことができる」と指摘する。
また、「AIは薬剤師の役割に取って代わるものではなく、薬剤師がその役割を最大限生かし、よりよい患者対応をできるようにするものだ。処方薬は、薬剤師がしっかり薬の種類、強さ、量、数量、宛名を確認した上で、発送している」(ダウネス氏)とも言う。
アマゾンは調剤医薬品の当日配達サービスを年内に十数都市まで拡大する予定だ。