物価高騰が進む中、年金で暮らす高齢者の貧困リスクが高まっている。我が国が抱える構造的な問題という意味では、働き世代も他人事では済まされない。高齢者の貧困問題をどう捉え、これにいかに立ち向かうべきか。社会活動家であり、「下流老人」の概念の提唱者でもある藤田孝典氏に聞いた。
高齢者の生活相談が増加
――藤田さんは「下流老人」という言葉を提起され、2015年に発表された同名の著書の中でその言葉の意味を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義。高齢者の貧困問題に鋭く切り込み、話題を呼びました。
藤田 NPO法人で活動していて、生活相談に来られる高齢者に三つの共通の指標があることに気づきました。一つ目は収入が著しく少ないこと。二つ目は十分な貯蓄がないこと。三つ目は頼れる人がいないこと。こうした方々の多くが非常に逼迫した生活をされている実態があった。なので該当する方は早めに相談に来てくださいと促すと同時に、社会全体に警鐘を鳴らすべく「下流老人」という造語で発信したのです。
――今現在「下流老人」に該当する方はどれくらいいるのですか。
藤田 高齢者の人口が3500万~3600万人で、高齢者の相対的貧困率が大体20%台で推移していると言われています。計算すると700万~1000万人くらいになります。
――この1、2年で大きく物価高に振れました。「下流老人」は増えていますか。