業界を越えた連携を目指すフローズンエコノミー協会が主催

 成長著しい冷凍食品市場を象徴するイベントが11月30日、東京・六本木のミッドタウンで開催された。冷凍食品をテーマにした初の大規模カンファレンス「フローズンエコノミーサミット」だ。冷凍食品の流通に伴う課題やその解決方法、関連技術やトレンドについて講演や討議を行うもので、冷凍食品メーカーから流通事業者、販促・マーケティング事業者、機器メーカーまで、関連する様々な分野の事業者が集まった。

 サミットを主催したフローズンエコノミー協会は、冷凍食品の需要拡大のため、家庭に2台目の冷凍庫の導入を推進するラボとして2021年9月に創設。翌年5月に一般社団法人化し、冷凍保存への理解促進、冷凍食品流通の仕組み作りを推進し、フードロスを削減する活動に乗り出した。今回のサミットは、「企業の規模や業種・業態を越え、お互いが持つ知見を共有し合い、業界全体をさらに盛り上げていくこと」(山口翔代表理事)を目的に開催した。

 サミットは4部構成で、冒頭、三菱食品営業企画本部 地域戦略推進オフィスの長郷慶輔次長が基調講演を行った。長郷次長は、コロナ禍により冷凍食品の需要が急拡大し、21年の単身世帯の年間支出額がコロナ前の19年比で2.6倍に伸長したことを紹介。また、冷凍食品を週1回以上利用する層は全体の6割を占め、冷凍食品が生活に定着していると説明した。さらに年間消費量を海外と比べると、日本はドイツやイギリスの6割未満で伸びしろが大きいことも指摘。市場の拡大には、温度管理などによる安全性の確保が重要だと強調した。

冒頭、三菱食品営業企画本部 地域戦略推進オフィスの長郷慶輔次長が基調講演を行った

 続く第2セッションは、冷凍自販機での無人販売の可能性と課題について、冷凍自販機メーカー大手のサンデン・リテールシステムの大木哲秀執行役員ビジネスソリューション本部長と富士電機の土屋裕司食品流通事業本部新ビジネス統括部部長、さらに冷凍自販機で有名店の麺類を販売する「ヌードルツアーズ」の事業を展開する丸山製麺の丸山晃司取締役、冷凍技術コンサルティング会社「えだまめ」の成田博之社長が議論した。

 丸山氏は、コロナ禍で売り上げが激減する中、取引先の商品を冷凍にして自販機で販売する事業を企画。これが反響を呼び、全国で150台の専用自販機を展開しており、現在も月間50~100件の引き合いがあるという。また、サンデンの大木本部長も、富士電機の土屋部長も冷凍自販機は安定的に需要が伸びていると説明。冷凍・解凍技術の進歩で品質の維持が容易になり、キャッシュレス技術の普及で盗難のリスクが減ったことも冷凍食品の無人販売の広がりに貢献していると分析した。

 第3セッションでは、おいしく、手頃な価格の冷凍食品が普及する中、既存商品とどう差別化するかについて、協会の山口代表理事をモデレーターに討議。味の素冷凍食品の石原敏章新規事業開発部長、駅弁の元祖、まねき食品の竹田典高社長、ヘルシー弁当のサブスクを手掛けるマッスルデリの西川真梨子社長が取り組みを紹介した。

 石原部長は、自社が取り組むアスリート支援事業のノウハウを生かして開発した高付加価値・高単価の「For ATHLETE」シリーズでマス向けとは異なるビジネス構築の取り組みを解説。竹田社長はコロナ禍で駅売店の売り上げが消失したのを機に参入した冷凍弁当のECの取り組みを紹介。保存が利く冷凍の強みを生かし、全国の特産品を使って開発した新商品「全国旅気分」を取り上げた。西川社長は、商品販売とともにボディメイクやダイエットに取り組む人のモチベーション維持を支援する取り組みでの差別化を説明した。

第3セッションでは、既存商品との差別化について、大手、老舗、スタートアップがそれぞれの取り組みを紹介した

 最後のセッションは、冷凍食品アドバイザーの西川剛史氏をモデレーターに、成城石井の早藤正史執行役員販売本部本部長と大丸松坂屋百貨店の岡崎路易DX推進部部長が、小売業の冷凍食品に関する取り組み事例を紹介した。輸入食材で知られる成城石井だが、輸入品は類似商品が多く、差別化が難しいことから、現在、オリジナル惣菜の開発に力を入れており、その冷食化も進めている。ただ、店舗は小型店が多く、冷凍庫を置けないためECでの販売に注力。 22年春に第1弾を発売した、食・楽・健康協会の山田悟理事長監修の「やまだ式ロカボ弁当」は、10月までに1万食を売るヒット商品になった。一方、大丸百貨店は、プレミアム冷食として取引先の商品の冷凍化に取り組んでおり、こちらも手応えを得ているという。

地域の活性化につながる地方企業の参加を呼びかけ

 今回のサミットには、協会の会員・非会員合わせて150名が参加。会場は満席で、13時半から19時までの長丁場にもかかわらず、途中退場する人も少なく、冷凍食品に対する関心の高さがうかがえた。セッションの合間で参加者全員が自己紹介を行ったほか、セッション終了後は、立食パーティーも開催。様々な形で参加者の交流が図られた。パーティーには、参加企業などの冷凍食品が供され、商品体験の場にもなっていた。

会場では、参加企業の商品も展示され、試食も行われた

 フローズンエコノミー協会の山口代表理事は、「今回のサミットをはじめ、様々な活動を通じて協会の認知度を高め、加盟企業を増やしていきたい」と、ネットワークの拡大に意欲を示した。とくに地方企業の参加を促す方針で、「商圏を広げる方法がわからない、手段がないというところは、(協会に加盟することで)自販機やITなど、商圏拡大につながる情報やネットワークが得やすい」(山口代表理事)として、加盟を呼びかけた。

 地方企業の商圏が広がれば、地方経済の活性化につながる。また、簡便性、保存性に優れる冷凍食品は、家事負担の軽減、フードロス削減などにも貢献する。可能性が大きい商品だけに、その普及を推進するフローズンエコノミー協会に寄せられる期待も高まりそうだ。