日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、6月10日、東京・千代田区のホテルグランドパレスで「2021年前期ドラッグストア業界研究レポート報告会」を開催した。報告会に先立ち「ポストコロナの経済と経営はどう変化するのか」をテーマに東京大学大学院経済学研究科の柳川範之経済学部教授による特別講演を実施。柳川教授は、新型コロナウイルスの収束の時期は見通せないものの、コロナの収束後は、社会の変化のスピードが加速すると予測した。また、現代は、変化が激しく先が見えない時代だが、そうした不安定な時代にこそチャンスがあると指摘。さらに、デジタル化・AI化が進む中では、人が持つ経験やノウハウの価値が高まり、デジタル化の時代だからこそ、人にしかできない仕事をつくり出せるかが重要と説いた。

 特別講演に続いて行った「ドラッグストア業界研究レポート報告会」では、ドラッグストア業界を巡る市場の動向や法規制の影響などについて発表した。

 ドラッグストア業界の20年度の売上高は、新型コロナによる巣ごもり需要を取り込み、8兆363億円と、初めて8兆円台を突破。マスク着用の影響やインバウンド需要の消失からビューティーケアが前年割れとなったものの、ホームケアや調剤・ヘルスケアなどが伸長し、前年を4.6%上回った。好調に推移するドラッグストア業界だが、12~15年の売上高の伸びは頭打ちで、一店舗当たりの売上高も減少傾向にあった。これが16年以降拡大に転じたのは、商圏の生活者ニーズに応え、食品や生活雑貨を取り揃えた店づくりが奏功したためだが、食品・雑貨の取り扱い店が一般的になる中では、これまで以上に生活者のニーズをとらえた店づくりが必要になると指摘した。

 JACDSが掲げる「街の健康ハブステーション」構想については、実現に向けた取り組み課題として、①スイッチOTC化促進、②受診勧奨機能の確立、③健康生活を提案する予防支援機能強化、④新たな価値創出のためのDX促進を上げた。

 このほか、今年8月に始まる「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の認定制度については、この制度により、今後、薬局の中で機能分業が起こってくると分析。これまで力を入れてきた健康サポート薬局については、今回の薬機法改正で法制化されず、診療報酬上の手当てが望めないことから、健康サポート薬局よりも地域連携薬局の認定に軸足を移す方が望ましいのではとの見解も示した。