資生堂は12月24日、「物理エネルギーによる肌への影響に関する新知見」に関するオンライン技術セミナーを開催した。冒頭、資生堂グローバルイノベーションセンターの佐藤潔アドバンストリサーチセンター長が登壇し、皮膚科学研究のうち血管・幹細胞に関する研究について紹介した。

 同社は企業ミッション「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」のもと、スキンケア、メイクアップ、日焼け止めを主軸とした化粧品に関する研究開発のほか、化粧品の枠を超えた周辺領域の研究開発を進めている。その中で今回は、実際に若々しい肌を実現するために真皮の幹細胞と毛細血管という二つのキーポイントがあることを示し、近年確立した非侵襲で肌内部の血管を可視化する技術を用いて顔面を観察すると、人の顔が浮き出るほど血管がびっしりと通っていることを明らかにした。「加齢とともに衰えるカギとなる事象をケアすることが健やかで美しい肌を目指すためには非常に重要。これまでも資生堂は血管の研究などを通じ、様々な薬剤を開発し、化粧品に応用してきたが、この新知見を生かし生活者に満足してもらえる商品をお届けしたい」(佐藤アドバンストリサーチセンター長)。

 続いて登壇した天野聡シニアサイエンティストは、物理エネルギーによる肌への影響に関する新知見を紹介。高周波や低周波を含む複合的な物理刺激(STエネルギー)を肌組織に作用させることで、毛細血管の密度を高め、新しい肌を生みだす真皮幹細胞の数を増やすことを発見した。この知見に基づき、STエネルギーを含む複数の物理刺激を、物理刺激を肌に伝えるために最適化された基剤とともにヒトの顔面皮膚に作用させた結果、弾力性(ハリ)の改善や、頬・フェイスラインの引き締めなどの効果がみられたという。

 資生堂は1916年に商品の開発や改良を行う試験室を開設。以降100年以上にわたり、「感性科学・安心安全・皮膚科学」に関する基礎・基盤研究を強みとした高品質商品を生み出してきた。2019年には生活者をよりよく知るために「グローバルイノベーションセンター」を横浜市のみなとみらい地区に開設。資生堂の研究員や美容部員が接客し、訪れた消費者や小売業者の個々の肌質の好みに合わせた化粧品を作るなど技術開発力を高めている。今後、これらの新知見を化粧品、および化粧品の枠を超えた新分野への応用につなげていく方針だ。

(オンライン技術セミナーで最新の皮膚科学研究の成果を発表した、左から佐藤潔アドバンストリサーチセンター長、天野聡シニアサイエンティスト)