売り場ごとにテーマを設け差別化商品も投入

 年商40億円の繁盛店を改装し、旗艦店の次のモデルを作り上げる。ヤオコーは11月20日、所沢北原店(埼玉県所沢市)をリニューアルオープンした。売り場面積を660坪から800坪に拡張し、お客の食シーンに合わせた新たなゾーニングを構築。そこに惣菜の新商品や、低価格対応の売り場・仕組みづくりを導入し、ストアコンセプトである「美味しさ、こだわりが伝えられ、楽しく豊かな食生活を提案する店づくり」の実現を図る。

 同店はヤオコーが運営するSC「the market Place所沢北原」の核店舗。駅からはやや離れた立地だが、周辺には団地やマンションが立ち並び、半径1キロ圏内に約5000世帯(約1万2000人)、3キロ圏内に約6万2000世帯(約14万人)が居住する。2002年のオープン以来、幾度かの改装を経てきたが、近年所沢駅周辺の競争が激化していることを受け、大規模なリニューアルに踏み切った。

 全体の売り場構成は13年6月オープンの東大和店をモデルとし、さらに進化させた。今回採用した惣菜・生鮮一体型の売り場はヤオコーでは目新しいものではないが、同店ではお客の食シーン、打ち出すテーマに沿って売り場を緻密にゾーニング。MDにメリハリをつけ、提案力の最大化を狙っている。

 得意の惣菜では、まず入り口付近を「軽食・デザート」ゾーンとして固めた。特にデザートではデリカ部門のプリンやチーズケーキ、杏仁豆腐などと、青果部門のカットフルーツを島什器に集約して展開。店内加工の商品で独自の世界を構築した。また20年3月オープンのスマーク伊勢崎店から始めた、焼いた生地に餡を入れたスイーツ「あんまる」も導入している。

惣菜売り場を食シーンごとにそーニング。店内加工のデサートを集約した売り場

 奥の壁面から始まるのが惣菜の「昼食・夕食」ゾーンだ。こちらも生鮮素材を活用した店内加工の商品を強化。精肉のローストビーフを使ったサンドイッチや寿司を「肉+Deli」として打ち出すほか、青果で扱う「ミゲールさんのあぼかど」を使用したメニューを増やした。そのほか鉄板焼きコーナーを「SACHI」としてブランド化。お好み焼きや厚焼き卵といった従来の商品に、炒めパスタ、サーロインステーキなどの新商品を加えて売り場を充実。鉄板3台を導入したシースルーの作業場と連動し、今まで以上にライブ感を演出する。

 外回りの通路は「素材市場」として、専門店に負けない品揃えと圧倒的な鮮度を訴求する。精肉はブランド牛を一頭買いしてコーナー展開。鮮魚はサーモンコーナーを拡大し、炙りやのっけ盛りなど提案の幅を広げた。第2コーナーのエンドにはクッキングサポートを配置。その周辺の棚にスパイスや調味料をまとめて並べることで、「素材と使う・調理する」を意識させるゾーニングとした。

「新提案」ゾーンでは、第3コーナーに子会社を通じて仕入れたイタリア直輸入品を集約した。ワインを中心に、種類豊富なチーズ、冷凍ピザ・タルトを展開。さらにはおつまみにぴったりなミートデリカの島什器も置き、まさに食シーンごとの買い合わせ提案を突き詰めた売り場となっている。

子会社の小川貿易がイタリアから直輸入する品を関連提案

生産性を高め低価格志向に対応

 もう一つ、同店が重点取り組みに据えるのが「価格コンシャス」だ。3km圏内のヤングファミリー層を広く取り込むべく、冷食、アイスを中心にEDLPを推進、低価格志向に対応する。また惣菜売り場の前面、第3コーナー、レジ前通路の柱にプロモーションコーナーを設置。単品量販を仕掛けることでお買い得品をアピールしていく考えだ。

「EDLPは今期から全社でより踏み込んで取り組んでいる。粗利率を下げる分、生産性を上げ、利益を確保する仕組みをこの店で実験しながら確立したい」(広報)。同店の生産性改善の取り組みとしては、グロッサリーでスライド棚の什器を採用したほか、エンドやプロモーションコーナーの陳列にかご什器を使用することで品出しの手間を軽減した。今後もこうした取り組みを継続し、効果検証の後、水平展開につなげていく方針だ。今後は川越市内で展開し利用が広がるネットスーパーも導入予定。年商は改装前の40億円から45億円への引き上げを見込む。

かご什器の導入などで生産性を高め、価格対応も今日K

 3カ年ごとの中期経営計画に沿って、これまでも絶えず旗艦店を進化させてきたヤオコー。現中計は今期で最終年度を迎えるが、同店の取り組みは新中計のテーマづくり、次の旗艦店開発にもつながる布石となりそうだ。

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