福岡県に地盤を置く大賀薬局(福岡市)は、競争の激しい九州において2019年9月期の売上高は260億円と増収で着地した。薬剤師の相談応需・接客力を生かした調剤薬局併設店舗に加え、カフェ併設店や化粧品専門店など多彩な店舗フォーマットを展開。免疫力向上を助ける商品を集めたエンド陳列も強化し、地域住民の健康を支える店舗として存在感を高めている。

漢方薬や薬酒が牽引しヘルスケアが伸長

 大賀薬局のヘルスケアが好調だ。コロナ対策に免疫力向上を求めるお客が増え、それに対し大賀薬局では漢方薬やサプリメント、薬酒など免疫力向上を助ける幅広い品揃えを展開。エンドでもこれらの免疫関連商材を集積して訴求するとともに、様々な不安を感じているお客に合わせた商品を提案。漢方薬の売り上げは2桁で伸長している。ヘルスケア全体では売上構成比が大きい一般風邪薬の売り上げがコロナの影響で伸び悩む一方で、免疫関連商材がその売り上げをカバーし、昨年度よりも売り上げを伸ばしている。

 今年3月以降、薬酒カテゴリーもヘルスケアの売り上げ拡大の牽引役となっている。その中でも購入が増えているのが、薬酒全体の売上構成比の9割前後を占める養命酒製造の「薬用養命酒」(1000ml 、700ml)。「養命酒」は14種類の自然生薬の薬効成分が体内を広く巡り、血行や代謝をよくし、血流を改善して体全体を温める。営業本部商品部次長兼ヘルスケアバイヤーの田中保臣氏は、「冷えを感じる50代以降の更年期に差し掛かったお客様で、今後も健康に過ごしたいお客様の購入が3月以降増えています」と分析する。大賀薬局では50代以上の女性客層が多い。その客層から支持されている「養命酒」の継続購入比率が高いのが特徴だ。

養命酒製造が長年研究してきた「クロモジ」を生かしたのど飴と「養命酒」をエンド陳列している

 こうしたユーザーの悩みに対して養命酒製造でも今下期、コロナ禍が続く中で「体を守る力」、「丈夫なからだへ」をキーメッセージに、体を温めて「冷え」や「疲れ」、「胃腸の不調」などの悩みを継続服用することで改善、丈夫な体に導くことの提案を強化していく。その販促策では今年からメイン購入層の60代に向けて新聞広告やBS放送での展開を強化している。

俳優の草刈正雄を新たに起用し、10月下旬からテレビCMや新聞広告、BS放送などで、「養命酒」が毎日の健康をしっかりと支える存在であることを打ち出している。

 さらに養命酒製造ではツイッタートレンド1位となった「養命酒エコバッグ」が当たるフォロー&リツイートキャンペーンを10月に再度展開した。今下期、店頭では「養命酒オリジナルカレンダー」などのノベルティグッズを活用し、ロイヤルティーを高める狙いだ。それに合わせて大賀薬局では約40万人が登録するポイントカード「Bibica」も分析し、「養命酒」の購入が多いロイヤルカスタマーに向けて継続購入を促すノベルティグッズも活用していく考えだ。

左から大賀薬局営業本部商品部の次長兼ヘルスケアバイヤーの田中保臣氏、健康食品&フード担当バイヤーの松岡映博氏

のど飴と薬酒の同時購買で買い上げ点数をアップ

 もう一つ免疫力向上を期待されて伸長しているのが、医薬品、医薬部外品メーカーののど飴商品群だ。大賀薬局ではのど飴が毎年2桁で伸長し続けていることから売り場面積を広げたが、これが菓子系の飴の売り上げを上回る状況だ。その中に養命酒製造が長年研究してきた国産ハーブ「クロモジ」エキスを配合した「養命酒製造クロモジのど飴」、「同生姜はちみつ」も昨年からのど飴売り場に追加投入した。

 同商品は定番棚に加え、「養命酒」の薬酒売り場で吊り下げやカゴを使った多箇所陳列やエンド陳列で訴求している。その理由を営業本部商品部健康食品&フード担当バイヤーの松岡映博氏は、「ブランドイメージがしっかりしているのど飴は多箇所展開しやすい。『養命酒』との同時購買を促し、プラス1品の買い上げ点数アップにつなげたい」と力を込める。養命酒製造でもPOPや専用吊り下げハンガーなど様々な販促資材を用意し、定番のど飴売り場に加え、幅広い売り場での提案を強化している。

 同商品の最大の特徴は国産ハーブ「クロモジ」のエキスを配合し、養命酒製造の長年にわたる研究知見を生かしたこと。今年9月に「養命酒製造のど飴」の商品名称から、「クロモジ」由来のポリフェノールを含有している分かりやすいパッケージに変更した。10月からは新聞の全面広告やBS放送でのCM展開、ウェブなどを投入し販促にも一段と力を入れている。

「養命酒」の定番棚に関連販売ののど飴の吊り下げで買い上げ点数アップを図る

「クロモジ」とは日本全国の山地に自生するクスノキ科の落葉低木で、高級楊枝にも使われて古くから日本人に親しまれている。養命酒製造では、19年に研究団体や自治体・企業法人と「クロモジ研究会」を発足。今年はクロモジ専任部署「クロモジ推進室」を新設し、クロモジの魅力を伝えていく。松岡氏は、「注目素材『クロモジ』の研究成果をQRコードでウェブとの連携や、今後は風邪薬コーナーでクロスMD展開するなどドラッグストアでの強みに生かしたい」と期待を寄せた。養命酒製造ではクロモジの研究を今後も進め、その知見を生かしのど飴市場の活性化につなげていく構えだ。