米大手小売りのターゲットは7月22日、セブンイレブン・インクの社長兼CEOを務めたジョー・デピント氏(冒頭写真)を取締役に選任したと発表した。就任は8月1日で、同氏は取締役会の「基盤・財務委員会」と「監査・リスク委員会」に加わる。マイケル・フィデルケCEOの下で成長戦略を加速させる取り組みの一環と位置づけられ、同社は運営、顧客ロイヤルティ、生鮮食品、オムニチャネルの各分野におけるデピント氏の知見に期待するとしている。

 デピント氏は小売りおよび消費財の分野で30年を超える指導経験を持つ。世界最大のコンビニチェーンを率いて、大幅な店舗拡大、デジタル分野の革新、消費者の嗜好の変化への対応を主導した。同氏の在任期間中、オムニチャネル機能、ロイヤルティ制度、生鮮食品の品揃えへの投資を加速させ、店舗網を拡大したという。同氏はこのほか、飲料・食品大手ペプシコやゲーム専門店ゲームストップでも経営幹部を歴任し、外食大手ブリンカー・インターナショナル、手芸用品店ジョアン・ストアーズ、事務用品店オフィスマックスなどの取締役として、上場企業の企業統治の経験も持つ。

 フィデルケCEOは「当社は商品調達力を軸に顧客体験を高め、技術を加速させ、従業員と地域社会を強化することで、新たな成長の道を切り開いている。デピント氏はその経歴を通じて、一貫して顧客に焦点を当て、チームに力を与え、卓越した業務遂行を実現してきた。特に食品とデジタル商取引に重点を置いた同氏の小売りの見識と経験は、戦略の勢いを高める上で、取締役会にとって大きな財産になる」とコメントした。

 ターゲットの筆頭独立取締役であるクリスティン・リーヒー氏も「取締役会が会社の戦略的な優先課題に合致する専門性と視点を備えることに、常に注力している。小売りと消費財の事業で成長とオムニチャネルの革新を主導してきた同氏の幅広い経験は、当社の長期的な成功を導く上で価値ある補強になる」と述べている。

新CEO下の再建途上での起用

 今回の選任はターゲットが業績の立て直しを進める途上での人事である。報道によれば、同社は数年にわたり売上高の伸び悩みに直面し、消費者がより低価格の競合へ流れ、選択的な支出を控える動きに苦しんできた(ロイター)。今年、長年CEOを務めたブライアン・コーネル氏からフィデルケ氏へと経営トップが交代し、フィデルケ氏は在庫の確保、品揃えの強化、価格の見直しに注力してきたとされる(同)。同氏は2月の就任時に、商品調達力の発揮、顧客体験の向上、技術の加速、従業員と地域社会の強化という四つの戦略の柱を掲げている(リテール・タッチポインツ)。

 足元では再建の効果を示す指標も出ている。リテール・タッチポインツによれば、同社は5月2日に終えた第1四半期に純売上高が前年同期比6.7%増、既存店売上高が4.7%増、デジタル既存店売上高が8.9%増となり、同四半期に2000店目を含む7店を新規出店した。今年は30店超の新規出店を計画しているという。また、同社は5月、四半期の想定を上回る決算を受けて、通期の売上高の伸びの見通しを2年ぶりに上方修正した一方、経済環境をめぐる慎重な見方も併せて示したと報じられている(インディアン・リテーラー)。

 今回の人事で注目されるのは、選任された人物がコンビニ出身である点だ。ターゲットは日用品から衣料、雑貨まで幅広く扱う大型総合小売りであり、業態としてはコンビニと直接重ならない。それでも、フィデルケCEOが「食品とデジタル商取引」を明示的に挙げてデピント氏の起用理由としたことは、同社が生鮮・食品分野の強化とオンラインを含む販売手段の充実を再建の要と見ていることを示している。

 総合スーパーであるイトーヨーカドーを祖業としながら、コンビニ日本トップに上り詰めたセブンでの知見を生かしてほしいとのターゲットの意向も見て取れる。複数の報道はターゲットが割安な競合へ客を奪われてきた経緯を指摘しており、食品や日常必需品の分野で来店頻度を高めることは、選択的支出の落ち込みを補う上で重要になる。日常の来店動機づくりと、ロイヤルティ制度を通じた顧客の囲い込みは、まさにコンビニ業態が磨いてきた領域であり、デピント氏の経験がそこに接続されることになる。