米スーパーマーケット大手クローガーは7月1日、食品・調剤薬局を手がける地域小売り大手ジャイアント・イーグルを買収する最終合意を発表した。買収価格は16億5000万ドルで、内訳は現金12億5000万ドルとジャイアント・イーグルが抱える債務約4億ドルの引き受けによる。クローガーの取締役会は全会一致でこの取引を承認している。

 ジャイアント・イーグルは1931年創業の非上場企業で、オハイオ州北部、ペンシルバニア州西部、ウェストバージニア州、メリーランド州、インディアナ州の5州にスーパーマーケット197店舗と単独の調剤薬局11店舗を運営し、年間売上高は約90億ドルに上る。フォーブス誌の米国大企業ランキングにも名を連ねる有力な地域小売り企業だ。生鮮食品の品質、薬局サービス、PB、顧客の囲い込み施策に強みを持つとされており、クローガーはこれらの資産を高く評価したとしている。

アルバートソンズ統合断念から約2年で“転換”

 今回の買収はクローガーにとって、アルバートソンズとの統合断念以降初めての本格的な買収案件となる。クローガーは2022年に約250億ドルでアルバートソンズを買収する計画を発表したが、独占禁止法上の問題を理由に裁判所が取引を差し止めたため、24年末に断念を余儀なくされた。今回の規模は当時の計画とは比較にならないが、クローガーにとっては外部成長路線への回帰を示す動きとして受け止められている。

 クローガーのグレッグ・フォーランCEOは「ジャイアント・イーグルは経営の質が高く、優れた地域小売り企業だ。戦略的な適合性は明確で、隣接する魅力的な市場への展開を可能にしてくれる。優れた店舗を運営し、手ごろな価格で生鮮食品と調理の利便性を提供するというわれわれの強みを存分に発揮できる」と述べた。ジャイアント・イーグルのビル・アートマンCEOも「クローガーとともに、より良い品質・サービスと日常的な価値を顧客に提供し、従業員にとっての成長機会を拡大できる」と歓迎の意を示した。

 クローガーは買収資金を手持ち現金で賄う方針で、取引完了後も純負債の対調整後EBITDAの目標比率である2.3〜2.5倍の水準を維持する見通しだ。1株当たり調整後利益への上乗せ効果は、取引完了後2年目以降(一時的な取引・統合費用を除く)から生じると見込んでいる。株主還元については、既発表の20億ドル規模の自社株買いプログラムを継続し、配当も取締役会の承認を前提に維持する方針を示している。

 規制当局の承認を得るに当たっては、ジャイアント・イーグルの一部店舗について限定的な売却(ダイベスチャー)が見込まれるとしている。取引の完了は27年を予定しており、所定の規制手続きおよびその他のクロージング条件の充足が前提となる。クローガーの財務アドバイザーはRBCキャピタル・マーケッツで、法務アドバイザーはジョーンズ・デイが務める。ジャイアント・イーグル側の財務アドバイザーはウェルズ・ファーゴ、法務アドバイザーはウィルマーヘイルおよびトラウトマン・ペッパー・ロックが担当する。

統合後のクローガーの成長戦略は

 クローガーはジャイアント・イーグルが持つ店舗網、顧客囲い込みプログラム、薬局事業、PBの資産に、クローガー独自の電子商取引、データ活用・個客化機能、業務規律を組み合わせることで、店舗・オンライン双方での成長を加速させ、顧客体験を向上させていく考えだ。両社はまたジャイアント・イーグルが地域社会で長年にわたって培ってきた関係を引き継ぎつつ、クローガーが推進する社会貢献プログラム「ゼロ・ハンガー|ゼロ・ウェイスト」を新たな地域で展開する計画も示している。

 ジャイアント・イーグルが展開するオハイオ州北部やペンシルバニア州西部はクローガーの現在の出店エリアと隣接しており、今回の買収はまさに「隣接市場への補完」という性格を持つ。また独占禁止法の観点では、アルバートソンズとの大型統合が裁判所に阻まれた経緯があるだけに、今回の案件における規制当局の審査の行方が注目される。買収価格の規模はアルバートソンズ統合計画(約250億ドル)と比べれば格段に小さく、一部店舗の売却を前提とした上で承認を目指す構えは、前回の教訓を踏まえた慎重な設計とみることができる。

 食品スーパー業界ではウォルマートによる食料品シェアの拡大とアマゾンのオンライン食料品事業の拡充が続いており、伝統的スーパーマーケット事業者にとって規模の確保と顧客基盤の強化は引き続き急務だ。クローガーにとって今回の買収が規制の壁を越えて完了し、統合効果を示せるかどうかが今後の焦点となる。