カナダ発のアスレチックアパレル企業ルルレモンは、2026年に六つの新市場へ進出すると発表した。単年としては過去最多となる市場開拓であり、同社の国際展開戦略が新たな段階に入ったことを示す動きである。

 今回の進出先は、ギリシャ、オーストリア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、インドの6カ国。欧州5カ国については、アリオン・リテール・グループとのフランチャイズ契約を通じて展開し、インドについては、すでに発表済みのとおりタタ・グループ傘下のEC事業者タタ・クリック(Tata CLiQ)との提携によって参入する。

フランチャイズモデルを軸に欧州・アジア太平洋を開拓

 ルルレモンはこれまで直営モデルを中心に成長してきたが、近年はフランチャイズモデルを積極的に活用している。今回の6市場同時進出もその延長線上にあり、投資効率を高めながらスピーディーに市場を広げる狙いがあるとみられる。

 新たな提携により、ヨガ、ランニング、トレーニング、テニス、ゴルフなど幅広い用途に対応した高機能アパレルやアクセサリーが、欧州およびアジア太平洋地域の消費者に提供される。欧州5カ国では公式ECサイト「eu.lululemon.com」を通じて全商品ラインアップを展開し、インドでは「タタ・クリック・ラグジュアリー」「タタ・クリック・ファッション」といったECマーケットプレイスを活用する。

 ルルレモンのEMEA(欧州・中東・アフリカ)担当のサラ・クラーク上級副社長は、「世界各地でルルレモンへの需要が高まるなか、2026年に六つの新市場へ進出できることを喜ばしく思う」と述べている。EMEAは、北米に次ぐ成長ドライバーとして同社が注力するエリアである。

「コミュニティ重視」が市場参入の核に

 ルルレモンの特徴として見逃せないのが、単なる物販にとどまらない「コミュニティ・ファースト」の姿勢である。同社はアンバサダー制度や地域イベントを通じ、運動やウェルビーイングを軸とした体験価値の提供を重視してきた。新市場においても、このモデルを維持し、身体的・精神的・社会的ウェルビーイングを包括的に訴求する方針だ。

 現在ルルレモンは、北米、EMEA、アジア太平洋、中国本土を中心に30以上の市場で事業を展開している。2025年夏のイタリア進出や、デンマーク、トルコ、ベルギーでのフランチャイズ展開に続き、今回の6市場追加は国際展開をさらに押し広げるものとなる。

 店舗立地や開業時期、地域コミュニティ施策の詳細は2026年中に公表される予定であり、グローバルアパレル市場における同社の存在感が一段と高まりそうだ。