アマゾン傘下のホールフーズ・マーケットが、食料品と日用品をワンストップで購入できる新しい店舗モデルを発表した。ペンシルベニア州プリマス・ミーティングに開設されたこの新コンセプト店では、ホールフーズが強みとする自然・オーガニック食品と、アマゾン・ドットコムの人気ブランド商品や日用品を同一店舗内で取り扱う。
買い物リストを一括で完結
この店舗では、ホールフーズ・マーケットの商品棚とアマゾン・ドットコムのカテゴリーがシームレスに統合されている。オーガニック野菜やグルテンフリー製品など従来のホールフーズ商品を購入しながら、アマゾン・ドットコムで人気のペーパータオル、洗剤、スナック、飲料などを同時に選べる仕組みだ。顧客はレジを行き来することなく、同一アプリ内で決済を完了できる。
この店舗の象徴的な特徴が、約930平方メートル(1万平方フィート)の自動マイクロフルフィルメントセンターである。バックヤードに設置されたこの施設には、1万2000点以上の商品が在庫されており、オンラインや店内のQRコード経由で即時注文が可能となっている。
顧客がスマートフォンでQRコードをスキャンすると、アマゾンアプリ内に専用ストアが開き、棚に並ばない商品――例えば、ペパリッジファームのクラッカーやジョンソン・ベビーシャンプー、スウィファーのリフィルなど――を追加注文できる。数分後には商品が準備され、店舗内の「アマゾン・ピックアップ&リターン・カウンター」で受け取ることができる仕組みだ。
マイクロフルフィルメントの裏にあるロボティクス技術
この新センターには、シリコンバレーのロボティクス企業フルフィル社の技術が導入されている。自律走行型ロボット「ショップボット」が商品を自動的に仕分け・搬送し、温度帯ごとに保管・出荷する。
従来のEC向け物流システムと異なり、生鮮食品を含む食料品専用に設計された点が特徴で、顧客の注文は数分以内に処理され、スタッフが最終チェックを行って受け渡しを完了する。
アマゾン・ドットコムはすでに全米1000都市以上で生鮮食品の当日配送を展開しており、年内にはその対象地域を倍増させる計画だ。プライム会員の場合、25ドル以上の注文は無料で当日配送が可能であり、利便性の面で競合小売企業との差を広げつつある。
ホールフーズ・マーケットCEOであり、アマゾン世界食料品事業担当副社長を務めるジェイソン・ビュッヘル氏は、「客が求めるのは“ワンストップショッピング”という利便性だ。新店舗では、お客が期待するホールフーズらしい体験を保ちながら、アマゾンのテクノロジーを最大限活用していく」と語る。アマゾンが持つAI・データ分析能力を店舗運営に生かすことで、需要予測や在庫管理の精度を高める狙いもあるとみられる。
オンライン注文にも広がる利便性
今回の取り組みは店頭だけでなく、オンライン注文でも同様に拡張されている。
アマゾンアプリやホームページ上のホールフーズ・マーケットオンラインストアでは、ホールフーズの全ラインアップに加え、アマゾン・ドットコムが扱うナショナルブランドや日用品も一括注文可能だ。顧客は必要な商品をすべて一つのカートにまとめ、店舗受け取りか配送を選ぶだけで完了する。
注文品の受け取りは従来どおり、店内またはカーブサイドでのピックアップが可能。配送はプライム会員の場合、1回あたり9.95ドルの手数料がかかるが、月額9.99ドルの「グローサリー配送サブスクリプション」に加入すれば、25ドル以上の注文で無制限に無料配送を利用できる。このサブスクリプションは、ホールフーズ・マーケット、アマゾン・フレッシュ、その他の地域スーパーや専門店にも適用される。
プリマス・ミーティング店での試行を皮切りに、アマゾン・ドットコムはこのモデルを他のホールフーズ店舗にも段階的に拡大する見通しだ。顧客の購買データと行動分析をもとに、地域特性に合わせた商品構成や価格設定を最適化していくとみられる。















