スターバックスは9月25日、北米を対象とした再構築計画「バック・トゥ・スターバックス」を前面に打ち出し、店舗閉鎖とノンリテール部門の人員削減を行う方針を示した。

店舗閉鎖で「強いコーヒーハウス」へ集中

 同社のブライアン・ニコルCEOは、社員(パートナー)あてのブログメッセージで、「物理的環境をお客様およびパートナーが期待する形で整備できない、あるいは収益性への道筋が見えない店舗は閉鎖する」と明言している。

「毎年、財務パフォーマンスや賃貸契約満了を理由に店舗を閉鎖してきたが、今回の決定はより大きな規模のものであり、影響は避け得ない」 という言葉からは、事態の重さが伝わる。

 ロイターなどは、北米の直営店数を2025年度末までに1%程度削減すると報じている。また閉鎖対象には、シアトルを象徴する「ロースタリー」店舗も含まれており、同社旗艦拠点の一つがその対象になったことには大きな注目が集まっている。

 店舗閉鎖による北米の店舗網全体へのインパクトは限定的である見込みで、年間を通じた開店・改装と閉鎖を合わせて、最終的には約1万8300店(直営+ライセンス合計)規模を維持する見通しだという。 ニコル氏はメッセージ内で、2026年度には再び店舗網を拡大する意向を示しており、今後12カ月で1000店舗以上の改装を予定していると強調している。

 このような店舗戦略には、「質の高い居心地(テクスチャ・ウォームネス)」を備えた店舗空間を増やすことで、従来の “サード・プレイス(第三の居場所)” としての強みを再構築したいという意図がある。実際、ニコル氏は改装後の初期データとして「来店頻度の向上」「滞在時間の延長」「顧客からの好意的なフィードバック増加」などを挙げている。

 だが、こうした店舗改廃にはリスクもある。地域住民にとってその地域の“顔”でもある店舗の撤退は、ブランドイメージ低下や顧客ロイヤルティへの影響も想定される。特に象徴性の高いロースタリー閉鎖は、地域の反発も招きうる動きである。

ノンリテール部門で約900人を削減

 併せて、スターバックスは店舗運営以外の本社や支援部門、いわゆるノンリテール部門の人員・コスト削減を発表した。対象となるのは約900名とされ、すでに多くの空席ポジションも閉鎖する方針である。

 この判断も、ニコルのメッセージ内で明示されている。「より良いスターバックスを築くために、緑のエプロン(店舗現場)パートナーへの投資、店舗内人員強化、卓越した顧客サービス、店舗デザイン強化、イノベーション創出に注力したい」との文言は、リソースを現場重視に再配分する意図を読み取れる。

 ノンリテール部門のパートナーには、前日の通知が行われ、退職金・福利厚生延長などのサポートが提供されるとの説明もなされている。さらに、業務上出社を要しない者には在宅勤務が指示され、通告のタイミングからして「人的影響を最小限に」との配慮も感じられる表現がなされている。

 ただし、報道筋ではこの一連の削減・閉鎖を含めた再構築に約10億ドル規模のコストがかかるとされており、同社はこれを2025年度償却費用とみなす構えであると伝えられている。

 さらに、同時期にCTO(最高技術責任者)が辞任し、暫定人事が発表されたという報道もある。これは、店舗の効率化・業務最適化を目指す技術投資の流れと連動した部門再編の一環と見られている。