欧州のオンデマンドフードデリバリー大手、ジャスト・イート・テイクアウェイ・ドットコムは8月21日、スイスのロボティクス企業リーヴァーと協業し、物理AIを搭載した自律走行型地上ロボットによる玄関先配送の商用パイロットを開始すると発表した。欧州において、車輪と脚を組み合わせた、見た目は“働く犬”のような「ハイブリッド型ロボティクス」をオンデマンド配送に実装するのは初の事例となる。
リーヴァーの開発したロボットは、車輪による高速巡航性能と脚部による段差・階段対応機能を併せ持ち、都市型ロジスティクス環境に最適化されている。AIモジュールは「フィジカルAI」と呼ばれ、静的・動的障害物(ゴミ箱、芝生、歩行者、車両、自転車など)をリアルタイムで検知・回避し、都市交通の安全基準を満たしたナビゲーションを可能とする。
走行速度は最大時速15キロで、一般的な宅配バイクと比較しても安全性を担保したスピードレンジでの運用を実現する。積載容量は40リットルで、大口オーダーにも対応可能。内部にはスピル防止の仕切りが設けられており、液体商品の輸送にも適している。さらに、全天候型の耐久性を確保しており、降雨・降雪・猛暑・強風といった多様な気象条件でも安定稼働できる設計となっている。
強固なセキュリティを担保
配送オペレーションのフローは、従来のラストワンマイル配送に準拠している。加盟レストランなどのパートナーが注文品をロボットに格納し、顧客は到着通知を受けた後に貨物ボックスをスマートフォン経由で解錠する。強固なロック機構により配送品のセキュリティは担保され、パートナーおよびユーザー双方に安心感を提供する仕組みだ。
また、すべての配送プロセスは監視センターにおいてリアルタイムにモニタリングされる。緊急時には自動的に停止するほか、遠隔オペレーションにより即時制御が可能である。夜間や悪天候下での視認性向上のため、ロボットには高輝度ライトと目印用の旗が装備されており、都市環境下での安全走行を確実にしている。
最初の試験導入はスイス・チューリッヒで実施され、地元レストラン「ゼキズ・ワールド」からの実オーダー配送に利用される予定だ。今回の実証を皮切りに、同社は2025年内に他の欧州主要都市にも導入を拡大する計画であり、将来的には小売りやコンビニエンス領域への応用も検討している。
ジャスト・イート・テイクアウェイはすでに、アイルランドにおいてマナ(Manna)と協業したドローン配送サービスを発表しており、今回の地上ロボティクス導入は、同社の「マルチモーダル配送戦略」の一環と位置付けられる。空と地上の両面から配送手段を多様化させることで、運営効率の向上と顧客体験の最大化を狙う。
「都市物流の次世代化」を狙う
同社のグローバル・イノベーション・ディレクターであるゾルニツァ・チュグリーヴァ氏は次のように述べる。「当社のビジョンは“日常の利便性を高める”ことにある。新サービスや新技術を積極的に探求・検証・統合することで、エコシステム全体の体験価値を強化していく」(チュグリーヴァ氏)。
また、マルコ・ビェロニッチ リーヴァーCEOは「ジャスト・イート・テイクアウェイとの協業は、自動化が都市空間に自然に融合する未来を先取りするもの。フィジカル AIはロボットに現実世界を理解し適応する能力を与え、効率的で直感的、かつ人間中心の自律配送を可能にする大きな一歩となる」と語った。
ジャスト・イート・テイクアウェイ・ドットコムは、オランダ・アムステルダムを本社とし、世界有数のオンラインフードデリバリープラットフォームを運営する。加盟パートナー数は36万2000を超え、レストランから小売りまで幅広い商品カテゴリを提供している。すでにオーストラリア、ドイツ、イギリスをはじめとする17カ国でマーケットプレイスを展開している。