ドイツ系ディスカウント大手リドルGBは、9月1日付で英国の従業員に対する時給を引き上げると発表した。今回の賃上げは過去2年間で5回目にあたり、賃金への累計投資額は7000万ポンドを超える見込みである。
リドルは、全英水準でもロンドン水準でも「実質生活賃金」を上回る給与を提示しており、英国スーパーマーケット業界の中で高水準の待遇を維持している。物価上昇や人材確保の課題が深刻化するなかで、従業員への投資を優先する姿勢を示している。
従業員の待遇改善を鮮明に
新たな給与体系では、全国の初任給が12.75ポンドから13.00ポンドへ引き上げられ、勤続年数に応じて最大13.95ポンドに達する。ロンドン地域では時給14.00ポンドが14.35ポンドへ上昇し、勤続により14.65ポンドまで引き上げられる。これにより、リドルは全国的にもロンドンでも生活賃金を上回る給与を提示することになり、業界内での競争優位を確かなものとする。
ステファニー・ロジャーズCPO(最高人事責任者)は、「この2年間、われわれは最も速く成長する実店舗型スーパーマーケットの地位を維持してきた。これは顧客対応スタッフやシフトマネージャー、倉庫作業員、清掃員など、日々の業務を支える従業員の献身のおかげである」とコメントした。そのうえで「その努力に報いるため、今後も市場をリードする水準の給与を提供していく」と強調している。
リドルは採用活動にも積極的で、公式サイトを通じて新規採用の機会を提供している。給与水準の高さに加え、店内での10%割引をはじめとする幅広い福利厚生を導入しており、働きやすさを重視する姿勢を打ち出している。待遇改善によって従業員の定着率を高め、顧客サービスの安定につなげる戦略だ。
今回の改定は、単なる賃上げではなく、従業員を重視する企業姿勢を示す象徴的な施策である。価格競争が激しい食品小売業界において、リドルは「低価格と従業員投資の両立」という難題に挑む姿を鮮明にしている。
英国市場での存在感を強める
リドルは1994年に英国で事業を開始し、現在では従業員数3万5000人以上、980を超える店舗、14の配送センターを展開するまでに成長した。シュワルツ・グループに属する同社は欧州の食品小売を代表する存在で、世界31か国で1万2350以上の店舗を運営している。英国でも北のカークウォールから南のワイト島に至るまで広範な店舗網を築き、高品質な商品を低価格で提供してきた。
また、社会的責任と持続可能性を重視しており、商品の約3分の2を英国のサプライヤーから調達し、地域経済に貢献すると同時に環境への配慮も徹底している。グローバルでは独シュワルツ・グループ全体で2023年度に1672億ユーロの売上を記録しており、その成長基盤を背景に英国市場での存在感をさらに高めている。