第1章 世界が驚愕する「日本の質」―― なぜ今、世界は日本を目指すのか
1990年代初頭、泡が弾けるようにして幕を閉じたバブル経済。それ以降の日本を語る際、枕詞のように使われてきたのが「失われた30年」という言葉です。国内総生産(GDP)といったマクロ経済の数字が伸び悩み、世界における日本のプレゼンスが低下したとされるこの期間は、長らく停滞と混迷の象徴として語られてきました。
確かに統計数値だけを眺めれば、日本は、「成長を忘れた国」に見えるのかもしれません。しかし今、この停滞したはずの国に世界中から熱い視線が注がれています。インバウンド(外国人観光客)の急増は、単なる円安や治安の良さ、観光コンテンツなどだけが理由ではありません。日本を訪れた外国人が一様に驚愕するのは、自国の環境から一気に異なる高次元の社会システムへと突入したように感じる、圧倒的な質の高さです。彼らにとって、日本の街角はもはやアトラクションの一部と言えます。ゴミ一つ落ちていない路上、極めて正確に運行される鉄道、そして100円ショップやコンビニエンスストアに溢れる、信じがたいほど高品質な商品群。安いから行くというフェーズは終わりつつあり、これからは、この質の高い社会を体験するために行くという人たちが増えるでしょう。この完成度を前にすれば、外国人観光客がいずれ1億人を突破するという一部の予測も、決して夢物語ではないのでしょう。















