まだ発売前のベーカリーの新商品を試食する5人の新入社員。「感想はどうですか?」と尋ねるオペレーションフィールドカウンセラー(OFC)に、新入社員の一人が「すごく美味しいです」と回答。すかさず阿久津知洋社長が「美味しいとしか言えないよね」と突っ込み、笑いを誘った。

新入社員に商品の説明をする阿久津知洋社長(左から2番目)

 セブンイレブン・ジャパンは4月1日、入社式を都内の東京ビッグサイトで開催した。入社式当日から自社の商品を試食してもらおうと、加盟店向けの商品展示会が開催されている同会場をあえて選定。これまで同社の入社式といえば、グループ企業と合同でトップの挨拶を聞く厳かなものだった。セブンイレブン単独での開催となった昨年は、新入社員と役員が同じテーブルにつく対話形式に変更。その上、今年は商品展示会とのコラボも決めた。「入社式を思い出として記憶に残る場面にしてあげたかった。それと商品展示会は我々の戦略を加盟店さんにご理解いただく場。今年入社してくれた皆さんは、昨年(当社が)ネガティブな要素もある中で入社を決断してくれた。その皆さんにセブンイレブンはまだまだ成長できるんだと、展示会を通じて理解していただきたかった」と阿久津社長は狙いを語る。

 入社式では会場に入ってきた新入社員に役員が花を手渡しし、それぞれのテーブルに着席。続く役員紹介では名前を呼ばれた役員がステージ中央で手を振るなどして新入社員の間に入る形でテーブルにつき、最後にステージに立った阿久津社長が入社当時の自身の思いを振り返りながら「急に社会人にはなれないもの。最初はゆっくりでいい。肩の力を抜いて一歩ずつ自分を成長させていってほしい」とメッセージを送った。

役員が社員に花束を手渡した
阿久津社長が新入社員にメッセージを送った
「このままじゃいけない」と会社の課題を口にするようになった

 阿久津社長が社長に就任して1年弱。その中で取り組んできたことの一つが企業カルチャーの変革だ。「このままじゃいけないと会社の課題を口にするようになったし、お互いを称賛しあえる文化になってきた」と阿久津社長は評価。今では会社のカルチャーを象徴する言葉として、自身が掲げた「エラー&ラーン」(失敗を学びに変える)を挙げる社員も増えているという。

 新たな社員を迎え、改めて今期問われるのは依然として課題である客数の回復だ。昨年7月から今年3月までの9カ月間、既存店客数は前年を割り続けている。ただ3月は前年に対して99.9%まで戻してきた。阿久津社長は、コストプッシュ型のインフレが続いてきたことが客数割れの一因としつつ、今年1月に実質賃金がプラスに転じたことを受け、「ディマンドプル型のインフレに変わり、商品力やオペレーション力がそのまま客数に跳ね返ってくる環境に変わってきたと思う」と指摘。「これをポジティブに捉えて、新しい価値を作ってそれをお客様に認めていただければ客数も戻していける。3月はあと一歩のところまで戻ってきているので、この4月、5月でなんとか戻していければ」と抱負を語った。(本誌・加藤大樹)