楽天グループ(以下、楽天)は1月25日、東京都内で「楽天新春カンファレンス2024」を開催し、三木谷浩史代表取締役会長兼社長が楽天市場出店者向けに講演を行った。
赤字が続く楽天モバイルは2023年末に加入者数が600万を突破。楽天モバイルユーザーの58.7%が楽天市場を利用しており、3大キャリアと比較してもクロスユース率が最も高いと強調した。
三木谷会長兼社長は、24年を「AI-nization」(AI化)元年と位置付ける。現在の生成AIによる変革を「会社や社会のあり方、すべてが変わる、もしかしたらインターネット以上の大きな革命」と語り、「楽天はAIエンパワーメントカンパニーに進化する。今年はその最初の年」と宣言した。従来からある楽天独自のエコシステムにAIをかけ合わせることで、出店者のビジネス拡大に寄与していく構えだ。
楽天がAIを活用する上での強みとして三木谷会長兼社長が挙げたのは、(1)国内会員数1億超、年間ポイント発行数6600億などに代表される豊富なデータ資産、(2)23年11月に発表した、米オープンAIとの新プラットフォーム「Rakuten AI for Business」の始動、(3)約6000人のエンジニアや研究者コミュニティを擁するなど、高度なグローバル人材、の三つだ。
特に(1)に関して、三木谷会長兼社長は「何百億という取引が楽天のプラットフォームを通じて行われている。グーグルは検索データはあるけど、取引データも金融データもない。メタ(フェイスブック)はソーシャルグラフはあるけど、取引データはない。楽天はさまざまなデータが一つのIDで結びついている、世界的に稀有な会社。おそらく世界ナンバー1」と自信を見せた。
今後はAIの活用で生産性を最大化させることで、「マーケティング効率」「オペレーション効率」「クライアント(店舗)効率」をそれぞれ20%アップさせる「トリプル20」の達成を目指すという。
また、AIやビッグデータの活用により、物流の効率性を高める楽天独自システムを開発。出荷数の予測や在庫配置の最適化などに役立て、今年4月から危惧される物流危機にも備える構えだ。
さらに、AIの知識や理解を深めるために、Chat GPT-4をベースにした楽天独自のAIチャット「RMS AIアシスタントβ版」を、その活用法を学べる講座「楽天AI大学」(仮)をリリースするという。
23年度(速報値)のグローバル流通総額は40兆円、国内EC流通総額は6兆円に達したという楽天。30年に国内EC流通総額10兆円を目指す上で「AIを活用するしかない」と語った三木谷会長兼社長は、一方で「人と人との有機的なつながりを大切にしていく」という原点を忘れずに、AIを駆使することでエコシステムの循環拡大を図っていく方針を示した。