大手ドラッグストア、ツルハホールディングス(HD)の代表取締役社長の交代が、6月2日発表された。堀川政司氏(61歳)から鶴羽順氏(46歳)へ。順氏は40代と年齢は若いが、創業家の鶴羽樹氏(78歳)の子息(次男)で、2018年から代表取締役専務を務めてきたこともあり、順当な人事と言える。樹氏もすでに代表取締役会長から取締役会長に退いている。若手経営者がまた1人ドラッグストア業界に誕生した。
些か気になるのは、堀川氏の早過ぎる退任だ。14年8月に創業家以外から初の社長就任。それから6年弱で退任となった。突然の退任は、堀川氏から、健康上の理由と、代表取締役社長退任の申し出があったため。順氏の登板が早まったのはそのためでツルハHDの大所帯を切り回すこととなる。
ドラッグストア業界にも創業家を継ぐ若手経営者が相次ぎ出てきている。ココカラファインとの統合で売上高トップ奪還を目指すマツモトキヨシHDの松本清雄社長(47歳)。人柄の良さと緻密な戦略立案が持ち味のスギ薬局の杉浦克典社長(41歳)など。だが、この両社とツルハHDの違いをあえて挙げれば企業の純度ではなかろうか。順氏の舵取りの一抹の懸念はここにある。
ドラッグストア各社は、その成長過程で合従連衡や企業合併を繰り返してきた。マツキヨHDもしかり。スギHDも過去、05年にディスカウントストアのジャパン、07年に群馬のドラッグ飯塚薬品を吸収してきた。マツキヨHDもスギHDも時間はかかり、苦労はしたが、合併企業を自社に取り込み、マツキヨなり、スギなりの企業風土に順応させてきた。今日ツルハとドラッグ業界の覇を競うウエルシアHDも同様に合併企業は自社内に取り込んでいる。
ツルハHDはその逆のM&Aで成果を上げ、成長を続けてきた。合併企業の屋号は残し、地域に密着。企業の自由裁量も残す。前述のJR九州ドラッグイレブンがツルハHDの傘下に入ったのも、M&Aの手法に共鳴したからだ。その立役者であり、グループの束ね役となってきたのは、鶴羽会長であり、退任した堀川社長だ。それを継ぐ順氏は人柄への評価は高く、実務に精通した様子を窺わせる。
折からコロナ禍で激動の時代。小売業界で唯一の成長業態と言われるドラッグストア業界の先行きも決して安閑としていられるものではない。その危機感を共有し、グループの結束力を高め、強いツルハHDをいかに作るか。ツルハ創業家の若手経営者が担うこととなる。