ディスカウンター大手のリドルGBは、英国での事業開始以来初となる「社会経済インパクト報告書」を公表し、2024年度に同社が英国内経済へ145億ポンドの付加価値(GVA)を創出したと明らかにした。同社は11月、イーストグリンステッドに1000店舗目をオープンしており、今後も数百店舗規模の出店を計画している。

145億ポンドの付加価値、10億ポンド超の納税

 今回公表された報告書によれば、リドルは事業運営とサプライチェーンを通じて、1年間で145億ポンドのGVAを創出した。同社は2年以上にわたり実店舗チェーンとして英国で最も高い成長率を記録しており、低価格戦略と品揃えの効率性を武器にシェアを拡大してきた。

 リドルは24年度に10億ポンド超の税金を英国に納めており、これはNHS(国民保健サービス)や教育、交通、国民年金といった公共サービスの財源形成に寄与している。同社の税負担の大きさは、リドルが「低価格でありながら持続可能な小売モデル」であることを示すものだと評価できる。

 また報告書では、リドルが1ポンドの価値を創出するごとに、英国のサプライヤーが追加で7ポンド、さらにサプライチェーン全体で2ポンドが創出されるとされており、英国経済の下支えとしての役割が強調されている。

英国産品へ58億ポンドを投資、3分の2を国内調達

 リドルは「バックイング・ブリティッシュ(英国産品支援)」を掲げており、24年度には英国産食品に対して58億ポンドを投資した。取扱商品の約3分の2を英国のサプライヤーから調達しており、この姿勢がサプライヤーの長期的な成長につながっている。

 農場から工場まで、リドルが支える直接・間接の雇用は28万1813人にのぼる。物価高が続く英国で、ディスカウンターの存在感が増すなか、雇用面でも地域経済に大きな役割を果たしている点が注目される。

 さらに福祉の面でも存在感を示している。英国では世帯の11%が食料不安を抱えているとされるが、リドルは余剰食品の寄付を通じて地域支援を拡大した。24年には、ネイバリーなどのチャリティ団体と連携し、1850万食相当の食品を寄付。6.8万人が支援を受けた。スコットランド高地からコーンウォールまで、英国全土の店舗網が地域密着型の活動を支え、リドルがコミュニティのインフラとして機能していることが示されている。

 リドルGBのCEO、ライアン・マクドネル氏は、「1000店舗目の開店は、単なる数字ではなく、その地域に与える好影響を象徴するものである。リドル効果を必要とする地域はまだ多く、我々は成長戦略を着実に進めていく」と述べている。

 英国ビジネス・通商相のピーター・カイル氏も声明で、「リドルが英国で成長し、25万人規模の雇用を支え、経済に数十億ポンドを生み出していることは素晴らしい」と評価した。リドルは従業員への還元も拡大しており、24年度の昇給額は、英国生活賃金の水準を合計3億9200万ポンド上回っている。