業界特化型インフラ構築を標ぼうするプラネットは昨年度、創業35周年を迎えた。その間、安全で中立的な立場として、メーカーと卸売業の企業間のEDI(電子データ交換)や商品データベースなどを継続的に安定して提供。日用品・化粧品・一般用医薬品・ペット業界の9割以上のメーカー・卸売業にEDIの利用が広がっている。創業40周年に向けて、消費財流通の発展を目指す新たな取り組みについて聞いた。
安売りしない日本製品の販売方法を考え研究会や調査を継続
――コロナ禍によって業績の明暗が出ている日用品・化粧品業界の状況をどう見ていますか。
田上 私は今のコロナ禍は長く続かずに、来年には生活スタイルは大幅に改善していくと見ています。年内にワクチン接種が進むことで、今までの巣ごもりの反動もあり外出する方は急増すると予想します。ただし、海外旅行は新型コロナ感染以外のリスクも想定されることからしばらくは敬遠され、人が多い場所を避けた地域への国内旅行が流行りそうです。その中で旅行グッズや日焼け止めなどの需要も回復してくるはず。在宅勤務から出社に切り替える企業も増えるため、化粧品の需要も回復すると思われます。
――「訪日外国人の買物意識と行動に関する調査」を2015年から実施していますが、訪日客は戻りそうですか。
田上 イノベーション推進部が引き続き調査をして、最新のインバウンドレポート「中国の日常生活と日本製品購買に関する調査レポート」を今年3月にホームページで公開しました。中国ではすでに新型コロナウイルスは収束していて活動的な生活を取り戻しつつあります。日本のコロナ禍も落ち着けば日本を観光したいと考えられており、インバウンド消費は必ず戻ると確信しています。中国の方は観光と買い物、そして日本製品が大好きな方が非常に多いのです。日本で買い物を楽しめるように業界全体でしっかり準備をしておく必要があると考えています。
――越境ECも盛んとなっています。
田上 中国の大手ECサイトの取り扱いが増えたことで販売量は伸びているようですが、価格競争が激しいため利益を伸ばしにくい構造にあるようです。安心・安全でユニークな日本製品は依然として人気が高いです。この魅力をしっかり伝え、安売りしないで購入いただける方法はないかと考え、中国で定着したSNSを使ったライブコマースにも注目しています。
――日本製品の魅力を発信するための活動は。
田上 16年からインバウンド研究会を実施していますが、今回は「中国市場に向けた商品PR研究会」を立ち上げました。中国の大手IT企業の美団が運営する中国最大の口コミサイト「大衆点評」の日本在住のKOC(キーオピニオンコンシューマー=レビューサイトで影響力を持つ人物)10人を招き、参加メーカーの担当者様とのKOC座談会を今年4月にリアルで開催。ハンドルネームしか公開していない人気KOCが集まる大変貴重な場となりました。メーカー1社、持ち時間15分で商品プレゼンを行った後、KOCが「商品のファーストインプレッション」、「商品を使用して気づいたこと」、「商品に関する、中国向けPRポイント」などを在日中国人ならではの視点で評価・分析。KOCは中国最大の口コミサイトで影響力を持つ方々なだけに、座談会では忖度のないストレートな商品評価が飛び交いました。事前に使用してもらった商品の中から各社一つの商品を選定し、日本への興味関心の高い中国の生活者へのPR動画の作成と配信もしています。この研究会の内容はホームページで公開しています。
EDI、MITEOS(ミテオス)のユーザーが拡大、業界の業務効率を高める
――EDIのユーザーが一貫して増えていますね。
田上 昨年、在宅勤務が始まり通常の出社ができなくなった時に、会社で行っている日々の定型業務は、発注データ、仕入データ、請求照合データを利用し、自動で処理すべきだと多くの企業に再認識いただきました。例えば、発注量が少ないFAX発注や電話発注はメーカーの受注担当者様が出社して処理する必要があり、コロナ禍では不便な状況になりました。出社しなくても受注処理を行うことができるEDIを少量発注で利用するニーズが一気に高まりました。21年1月期時点では、ユーザー数はメーカー・卸売業合計で1260社となっています。
――業界の生産性を高めるシステムではどのようなものが。
田上 発注・仕入オンラインデータ交換を手軽に実現できるウェブサービス「MITEOS(ミテオス)」の展開を強化しています。MITEOSはパソコンだけでミスのない合理的な受注と仕入データの作成が簡単にできることから、卸売業からメーカーへの導入依頼も増えました。メーカーにもオンラインデータ受注の便利さを認識いただき、新規利用社数も例年の2倍以上に増えました。MITEOSの利用をきっかけに商品データベースなど標準化されたサービスの利用が広がることを期待しています。
――「広く遍く」を企業理念とした御社の役割がより一層高まりそうです。
田上 3年ほど前からメーカー、卸売業の切実な課題として、物流クライシスが挙がっています。当社は物流には詳しくないのですが、業界インフラとしてお役に立てることがあるのではないかと、メーカー・卸売業の物流の担当者様に参加いただき、研究会を開催。まさにゼロからの勉強会のスタートでした。メーカーと卸売業の物流センターは年々高度化し、今後も多くの投資が予想されますが、物流センター間は物流事業者任せだったため高度化から遅れています。SDGsの観点からもトラック待ち時間によるCO2排出量削減、ドライバーの長時間労働是正などには、業界全体での最適化に向けての取り組みが急務となっています。そこで、業界のメーカー・卸売業・物流事業者の3者間のデータ活用を進め、物流課題の解消を目指す「ロジスティクスEDI概要書」を昨年2月に発表。今年1月には運用想定や導入ステップ案も追加し、バージョンアップしたVer.2.0を発表。物流EDIの標準化は物流課題解消の第一歩になると考えています。
――地域のインフラの役割としては買い物代行のツイディを運営するダブルフロンティアにも出資しています。
田上 ツイディは育児や家事、仕事で忙しい人や、お店が遠くて行きづらいという方の課題解決と、一般消費材市場の活性化にもつながると考えて出資しています。ネットで注文した商品が、2km商圏内には最速1時間以内に届くという他にはないサービスです。スーパーではライフコーポレーション、サミット、京王ストアなどに採用いただき、スーパーシティ構想に採用したいと自治体からも問い合わせをいただいています。商品画像を含む商品の基本情報を共有するシステムも準備ができたので、導入スピードと使い勝手が非常に良くなっています。
――25年に向けた中期経営戦略「ビジョン2025」の進捗はいかがでしょうか。
田上 ビジョン2025では、15年に①企業間取引における業務効率の追求、②企業間におけるコミュニケーションの活性化、③流通における情報活用の推進、④社会に役立つ情報の収集と発信の四つを掲げました。一つ目はEDIとMITEOSの導入比率が毎年高まり、それが業務効率の向上にもつながってきました。業務を阻害する要因となる災害を避けるために、徹底した安全対策にも取り組んでいます。東京と富山の2拠点にネットワーク基盤を常時稼働させ、災害時にも普段と変わらないサービスを提供できる体制を整えています。二つ目は、メーカー・卸売業・プラネットの三者間のコミュニケーションを活発化することが目的です。「中国向け商品PR研究会」のような、他にはないコミュニケーションの場を生み出していくことで活性化に努めます。三つ目は、取引の軸となる商品データベースの提供をはじめ、23年に導入されるインボイス制度への対応など、より業界に寄り添った情報の提供に力を注いでいます。最後の四つ目は、旬な情報を業界の中立的な立場で収集・発信する意識調査「Fromプラネット」をはじめ、業界活性化のヒントとなる情報発信に力を入れています。発信した情報は多くのメディアで取り上げられるなど存在感を高めています。
――25年に向けての経営戦略は。
田上 令和に元号が変わってから非常に大きな社会変化がありましたが、ビジョン2025は着実に実行していきます。そして25年は当社が創業40周年を迎える記念の年でもあります。現在のビジョン2025の策定時は社長の私と会長(玉生弘昌)でビジョンを描きましたが、4年後にはさらに成長した社員から現場の意見を積極的に収集し、社員が中心となって目指す当社の新しいビジョンを描き、発信していきたいと考えています。