来年5月末に改正食品衛生法の経過処置が終了
新型コロナウイルス感染の急拡大で食品を扱う企業は衛生管理の徹底がより重要となっている。今年6月には改正食品衛生法が施行され、その経過処置が来年5月末で終了となる。原則として来年6月から食品を扱うすべての事業者は一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施が求められる。生鮮や惣菜、冷蔵・冷凍品を販売する食品スーパー、コンビニ、ドラッグストアをはじめ、食品加工メーカー、外食、ホテルなどの様々な業種が対象だ。これらの企業は衛生管理に関する記録・資料作成の作業負担が増えるとともに、そのデータを紙などで1年間保管しなければならなくなる。
それに先立ちパナソニック産機システムズでは、タブレットを使ったクラウドによるHACCP支援サービス「エスクーボフーズ」の提供を8月から開始した。同社はこれまでも主力事業である冷凍・冷蔵設備のソリューションとして「温度日報サービス」を展開していたが、今回新たに業務支援サービスとして「一般衛生・工程管理」まで拡大し、両サービスをあわせて「エスクーボフーズ」として展開する。
「一般衛生・工程管理サービス」は、従業員の健康状態から食材の入荷・保管、調理温度、手洗いなどの衛生状態、清掃・点検まで、HACCPに対応した業務工程の衛生管理を行う、タブレットを活用したクラウドサービスで、食品を扱うすべての店舗や厨房、加工・物流センターの支援が可能なサービスとなっている。
初期導入では、清掃・点検などのチェック項目を事前に打ち合わせの上設定したタブレットに加え、調理時の芯温計測機、従業員の体温を簡易計測できる放射温度計などの必要機材を環境に合わせてパッケージで提供。タブレットは作業チェックリストのカスタマイズ設定が可能なうえ、いずれの機材もタブレットと連携。改正食品衛生法に必要な記録・資料整理作業負荷の大幅な削減に加え、これらデータはクラウド上に自動保存するので紙で保管する手間や紛失リスクもなくなる。さらに各店舗で記録したデータは本部で一元管理できるため、計測抜けや記録漏れ・間違いのない品質の高い衛生管理を実現。本部から各店舗への衛生管理計画が運営可能なので、多店舗展開する小売りや外食のチェーンに最適なシステムだ。
新事業開発本部ソリューション統括部の森井洋平担当部長は、「各業界団体が出している衛生管理のための手引書に基づき、記録に残せるパッケージでご提供します」と強調。同本部同統括部の松尾太博氏は、「食品スーパーさんなどから要望が多いのが惣菜調理などの加熱時の芯温計測です。例えば唐揚げの場合、タブレットで唐揚げを選択し、安全に揚げるのに必要な芯温を芯温計で75度以上、90秒以上を計測。手入力しないで正確なデータをクラウド上に記録できるので、食の安心安全につながります」と説明する。
また体温は、従業員の自己申告ではなく、正確な放射温度計で計測しデータをクラウドに保存。店舗や厨房、加工センターで必須となる、コロナ感染拡大のリスクを未然に防ぐ一助となる。手洗いや体調のチェックのほか、除菌などの清掃も従来の手書きのチェックシートによる運営から、タブレット入力にすることで記入漏れをなくし、本部や店長などの責任者がクラウド上でリアルタイムに健康状態を確認できる。これらデータの取り出しも簡単で、保健所からの書類提出要請にもすぐに対応できるのが強みだ。
「温度日報サービス」導入が300店舗まで拡大
同時に2018年から展開していた冷凍・冷蔵ショーケースやバックヤード機器の庫内温度を自動収集するクラウド型管理システム「温度日報サービス」も引き続き提案を強化している。この収集データは、グラフ表示のほかレイアウト監視や日報出力ができ、それぞれの画面で本部と各店舗で一元管理できる。庫内温度や機械の不具合など異常発生時にはメールで通知する仕組みだ。森井担当部長は、「庫内温度の確認は義務化されているため、1日数回、何十カ所と時間と労力をかけ、従業員さんが紙のチェックシートに手入力している場合が多い。ですが、作業負担が大きく効率も悪くなっている」と指摘する。
そこで同サービスでは正確な温度チェックに加え、手作業をなくした完全省力化で人件費の削減にも貢献。本部で全店舗を管理しやすいので多店舗管理にも最適だ。実際、大手スーパーなどを中心に、すでに200店舗で採用されており、今年度には300店舗までの導入拡大が決まっている。これら「温度日報サービス」は、他社製品も管理可能だが、同社製の冷凍・冷蔵設備導入店舗であれば追加初期費用が安く導入もしやすい。
同社は遠隔クラウドシステムを使った両サービスの「エスクーボフーズ」の展開拡大で、改正食品衛生法対応とコロナ感染拡大予防を強化。店舗や厨房に関するすべての食の安全・安心に貢献していく構えだ。