新型コロナ禍が明らかにしたのは、感染症への対応が企業の存続を揺るがしかねないという事実だ。特に食品を扱う企業にとって、ウイルス、細菌、カビなど、目に見えない脅威への対策強化は喫緊の課題となっている。こうした中、ソニーの「総務センター」を母体とし、2019年にNTTファシリティーズとソニーピープルソリューションズの合弁会社として誕生したNSFエンゲージメントは、オフィスや店舗などに向けた感染対策事業を新たにスタート。特に食品スーパーには、お客、従業員双方の感染リスクを低減する「クロラス酸水」による感染対策ソリューションの提案を強化している。
幅広い除菌力と安全性を両立する「クロラス酸水」を活用
コロナ禍の感染対策として、アルコールや次亜塩素酸水による除菌が一般化したが、新たな除菌剤として「クロラス酸水」への注目が高まっている。NSFエンゲージメントはこれにいち早く着目し、薬剤の提供を始めるとともに、空間にミスト状のクロラス酸水を噴霧する専用噴霧器をベンチャー企業と開発。オフィスや工場を始め、小売・飲食店、病院、物流倉庫、ライブハウスなど、様々な施設に向けて導入を広げている。
同社が提供するクロラス酸水とは、クロラス酸 (亜塩素酸)を主成分とする食品添加物殺菌料だ。その最大の特徴はなんといっても幅広い除菌力にある。長年、食品工場などで衛生対策に使用されてきた実績が示す通り、多様なウイルス、細菌、カビ類に対して有効。例えば、アルコールが効きにくいノロウイルスや、加熱への抵抗力が強い食中毒菌などにもしっかりと効果を発揮する。また水や汚れにも強い。水で効果が薄まるアルコール、汚れと反応して失活しやすい次亜塩素酸水に比べ、場面を選ばずに使用できるのも利点の一つだ。
優れた効き目に加え、クロラス酸水は安全性の面でも高いポテンシャルを有する。薬剤は手指にやさしい弱酸性。水性で乾燥も生じにくく、ぬめりもないため、肌が弱い人でも使用感やかぶれを気にせず使いやすい。また臭いもほとんどない上、金属をさびつかせたり、布を変色させるような問題も少ない。NSFエンゲージメントのNSクリエイション部門 CA事業室の亀井啓一室長は、「幅広い除菌力と高い安全性を両立するクロラス酸水は、他の様々な除菌剤と比べても引けを取らない優れた特性がある」と太鼓判を押す。
食品スーパーに向け訴求を強化、専用噴霧器を用いた「空間除菌」も提案
クロラス酸は厚生労働省からも食品添加物として認可を受けた成分であり、大規模食堂や調理場などでのノロウイルス対策として使用が推奨されている。実際、食品メーカーの工場などでは、コロナ禍の以前から、クロラス酸水が幅広く使われていた。例えば、大手パンメーカーでは焼き立てのパンを冷ます工程でカビが発生しやすいことから吹きかけることでカビの発生を防ぎ、またコンビニのカット野菜の工場においては、野菜の変色や雑菌の付着を防ぐためにも使われている。金属がさびにくいので、食品運搬のトラック内の除菌でも重宝されている。
安全性が高く、食品との相性がよい特性を生かし、亀井室長がクロラス酸水の提案を強めたいと考えているのが食品スーパーだ。現在、コロナ禍で需要が高まる食品スーパーだが、一方で店舗の従業員は不特定多数のお客との接触で感染リスクが増加している。アルコール消毒を実施しないわけにはいかないが、その作業自体が現場の負担となっており、慢性的な手荒れも悩みの種だ。さらに亀井室長は、「コロナ対策の換気によって、別のウイルスや菌、カビ類を店内に取り込みやすくなっている」と指摘。実際、あるスーパーでは食品売り場のカビの発生が著しく増える事例も起こっているという。
こうした課題に対し、NSFエンゲージメントはクロラス酸水による新たな衛生対策を積極的に訴求している。同社はクロラス酸水を、常に持ち歩ける携帯用スプレーやディスペンサーなど、目的に応じた様々な形態で提供しているが、中でもソリューションの目玉と言えるのが、空間全体を除菌できる専用噴霧器だ。独自特許技術によって平均粒径0.3~1.0µmの微細なミストを空間に噴霧。成分が素早く広範囲に拡散し、噴霧後も長時間浮遊し続けるため、空間に漂うウイルスなどを除菌、抑制する効果がある。噴霧器1台で100㎡(天井高3.5m)をカバーできるほか、プログラム間欠機能によって噴霧時間、待機時間、スタート時刻を分単位で設定できるので、部屋の広さや用途に応じて効率的な運用が可能だ。
同社が提供するソリューションはこれだけではない。直近5月には、従来の噴霧器ではカバーしきれなかった大空間向けに空調専用噴霧ユニットも空調機の最大手企業などと開発した。既存の空調設備に後から容易に設置でき、1台で約750㎡の大空間に対応。液の補充頻度を減らす自動希釈機能も設けた。こちらはより大型の店舗などに向けて提案拡大を計画している。
「売り場や加工場で使う除菌剤をクロラス酸水に切り替える提案から、噴霧器あるいは空調ユニットを活用した空間除菌まで、面積の大小やニーズに応じて柔軟に対応できるのが当社サービスの強み」と亀井室長は強調。既に複数のスーパーとの商談が始まっており、ある大手スーパーとは閉店から翌日の開店までの時間を使ってクロラス酸水の噴霧を行い、カビの発生を抑制する実証実験についても検討を進めているという。
確かなエビデンスに加え効果の測定サービスも行う
気になるのは空間除菌の効果を示す裏付けだが、同社は北里環境科学センターで検証試験を行った結果をエビデンスとして公表している。噴霧器を使い、クロラス酸水200ppmを25㎡に10分間噴霧すると、噴霧前に45万あった黄色ブドウ球菌がわずか150に減少。細菌に対する画期的な効果が確認された。大腸菌ファージを用いて行った対ウイルスの実験でも、同様の噴霧でファージ数は2.8万から100まで減少。そのほか青カビに対しても、間欠的に噴霧を繰り返すことで、噴霧前に6万以上あったカビ菌が数時間後には測定限界以下まで減少することが認められた。
もちろん、安全性試験も実施済みだ。クロラス酸水を噴霧した環境下でラットを90日間飼育し、その後病理解剖をしても異常がないことを確認、第三者機関のお墨付きも得ている。
同社はまた、噴霧器が十分な効果を発揮しているか、機器を用いて測定・調査するオプションサービスも提供している。「初めて使われるお客様にも効果をご理解、ご納得いただいた上で安心して導入いただきたい」(亀井室長)として、1カ月間無料で噴霧器を試せるキャンペーンも実施。そのほか、噴霧器の適切な設置場所の提案、設置する空間の雰囲気に合わせたラッピングサービスも行っており、行き届いたサポート体制も同社が支持を集める理由の一つだ。
今年6月のHACCP完全義務化を受け、食品業界の衛生管理の意識はますます高まっている。NSFエンゲージメントはクロラス酸水の提案で、コロナ対策はもちろん、それ以外のウイルス、菌、カビといった目に見えない脅威に全方位で対応。人が集まる場において「安全な空間」と「安全な習慣」を提供しながら、ゆくゆくはこの感染対策手法を新たなスタンダードとして定着させていく構えだ。