もともと糖尿病治療のために開発された「GLP−1受容体作動薬」を用いた「減量」が、英国で急速に広がっている。これまで肥満対策といえば、食事内容の改善や運動習慣の指導が中心だった。しかし、食欲そのものを抑制するこの薬剤が減量の目的でも使われるようになったことから、食品・外食市場の需要が質・量ともに激変するという、これまでにない現象が起きている。

 背景にあるのは、欧州でも肥満率の高い国の一つである英国が長年抱えてきた、深刻な肥満問題である。成人の約3割がBMI(国際的に肥満度を示す体格指数)30を超える肥満体で、25から30の過体重まで含めると人口の6割以上に達する。肥満は2型糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患リスクを高め、国民保健サービスの医療負担を増大させてきた。体が重すぎて2階のベッドやトイレから動けなくなり消防車を呼ぶ、という話も珍しくない。このため、英国では重度肥満患者を対象にウゴービやマンジャロといったGLP−1系薬剤の国保適用を拡大し、2023年より減量治療の手段として処方している。あくまでも公衆衛生の一環として始まった政策であり、18歳以下および太っていないのにもっと痩せたいといった目的には保険が適用されない。

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