化粧品小売り大手のセフォラは6月18日、特定の時間帯に店内の音楽を絞り、照明を落とし、画面の明るさを調整する「クワイエット・アワーズ(静かな時間帯)」の取り組みを全地域の店舗に広げると発表した。感覚過敏や神経多様性(ニューロダイバーシティ)を持つ顧客を含む、刺激の少ない環境を好む人々が安心して買い物できる場をつくることを目的としている。
取り組みの内容は、音楽の音量を下げること、強い香りを抑えること、照明の輝度を落とすことなどで、追加の費用負担や手続きなしに来店客が静かな雰囲気の中で商品を選べる時間帯を設けるものだ。企画段階では神経多様性コミュニティの当事者や、インクルージョン支援を専門とするオープン・インクルージョン、パーパスフル・フューチャーズなどの外部専門機関、および社内の従業員グループの声を参考にしたという。
先行導入は8市場・32店舗で実施され、同社の調査によれば神経多様性を持つ来店客の多くが「体験が大きく改善した」と回答し、全顧客の9割が「店舗がより包摂的で居心地が良くなった」と評価したとしている。セフォラは全世界で8000万人の顧客を抱えており、今回の全店展開はその規模での初の試みとなる。
同社によれば、この施策は神経多様性を持つ顧客だけでなく、騒がしい環境を苦手とする顧客全般にとっても有用だという。店舗スタッフ(ビューティ・アドバイザー)からも「業務中の気持ちの落ち着きや顧客との対話の質が上がった」との声があがっている。
感覚過敏や神経多様性への対応は、欧米の小売業界では近年、障害者差別解消の観点から実施が広がりつつあるテーマだ。インクルーシブな店舗環境への取り組みは、企業の姿勢として評価される一方、「どの時間帯に」「どの程度の調整を」行うかについては地域や店舗の状況によって異なる。世界規模で均質な体験を提供できるかどうかが、今後の焦点となるだろう。
(冒頭写真は、ニューヨークのセフォラ店舗)














